FUKUSHIMAいのちの最前線
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第3章放射能との闘いFUKUSHIMA いのちの最前線225Nikkei Medical 2012.3「特集震災医療成果と反省:Part1 明らかになった災害関連疾患の実態」掲載急性障害は見られず2次被曝の過剰な心配も放射線被曝 震災後に発生した福島第1原子力発電所の事故に関連する臨床的な影響の報告も出始めた。放射線による皮膚炎や胸部、腹部、下腿の挫創、内部被曝の疑いなどの被曝・汚染傷病者は、これまで福島県立医大に12人、放射線医学総合研究所(放医研、千葉市稲毛区)に11人搬送された。その多くは原発作業員だ。 福島県立医大救急医学講座助教の長谷川有史氏は、「患者受け入れ時にはまず、気道呼吸循環確認のために医師が患者に触れる部分の汚染検査を行うとともに、生理学的な重症度を確認した」と説明する。その後、患者状態が許せば全身を洗って体表面に付着した放射性物質を流し、問診では吐き気はないか、下痢はないか、汚染後に意識を失ったことはなかったかなどを確認した。全身の高線量放射線被曝による急性放射線症候群の前駆期では、吐き気や下痢、意識消失などの症状が表れるためだ。 12人のうち、高度な汚染が見られたのは3人。原発内の水たまりで作業した際、放射性物質が足に付着した。2人は下腿まで浸水し、β線熱傷疑いと診断された。もう1人は長靴を着用しており浸水はなかったが、2人と同様に個人線量計の値が100mSvを超えていた。 線量が下がらず、内部被曝の可能性もあったため、同大は3人を精査目的で放医研に転送。放医研では皮膚に紅斑を認めず、β線熱傷ではなかった。線量が低下したため退院し、皮膚症状の再発もないという。 一方、飛散した放射性物質による低線量被曝の周辺住民への影響については、6月から調査が始まった。原発周辺の先行地区を対象とした調査では、放射線業務従事経験者を除く9747人の99.3%が、事故後4ヵ月間の推計被曝線量が10mSv未満だった(右掲のインタビュー参照)。 今回の事故では、医療機関において原発周辺の住民からの2次被曝や汚染を恐れた診療拒否が起こった。放医研緊急被ばく医療研究センターの富永隆子氏は「体表面の放射性物質は脱衣によって8~9割は除染できるし、汚染がなければ普通の救急患者として対応可能。しかし、現在も原発内で発生した傷病者の受け入れ先を探すのが困難なことがある。スムーズな受け入れ体制づくりが必要だ」と話している。

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