FUKUSHIMAいのちの最前線
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222福島医大被曝医療班の活動−communicationとeducation− 知識と技能維持のため,院内勉強会とシミュレーションを繰り返した。勉強会は夏休みまで月・火・水曜日の夕方1時間,放射線物理,救急医学,放射線計測などについて学んだ。被曝傷病者診療シミュレーションは,少なくとも月1回,木曜日夜に行った。実技をビデオ撮影し,翌週はビデオの反省会を行った。反省事項は,傷病者診療手順に反映した。常に現場を見守るweb会議 災害医療の現場では現在も毎日,原発内と全国の医療拠点を結び,web会議*2が行われている。モニターを介して顔を合わせ,原発の最新情報や問題点を共有,討論する。傷病者発生時は,通信情報伝達の補助手段として利用される。議事録が作成され,関係各所で共有される。 web会議を通じて,原発最新情報収集,当院の役割を確認するのはもちろんであるが,実は,孤立しがちな現場を皆で見守るという意義も大きいと考えている。震災初期の孤立状態を,この会議で救済してもらった経験をもつ当院としては,web会議は今後の災害医療の必須ツールだと思う。緊急被曝医療体制の維持 現在の原発事故に対する医療体制は,地域医療の実情をくみながら,徐々に作り上げられてきた(図2)。当院は二次被曝医療機関として,被曝・汚染を伴うあらゆる外傷と疾病に24時間対応できるような体制を現在も維持している。一方,原発内救急室と搬送拠点の医療は,被曝医療の専門家からなる県外支援に大きく依存している。日常の診療体制を維持することすらままならない地域の現状においては,震災前に想定された緊急被曝医療ネットワークを維持することが困難である。一自治体だけでこの体制を支えることはできない。支援の皆様に心から感謝申し上げる。公務危機介入者に対する健康管理 公務危機介入者とは,消防,警察,自衛隊,その他の被曝汚染リスクの高い公務作業者を指す。特に,地元の消防・警察職員は,多くが避難を余儀なくされている被災者である。心身の影響は想像を絶する。 当院では震災後,放射線健康管理外来を設置し,公務危機介入者を心身両面から長期に支援する体制を図っている。これまでに延べ440人の放射線影響について,検査と説明を実施した。公務危機介入者の健康管理体制については,徐々に法整備がなされた2)。一方で,経済的支援等は棚上げ状態である。住民に対するリスクコミュニケーション 住民は,放射線の健康影響に,大なり小なり不安を感じており,そこから受ける精神的影響は計り知現在の活動図2 福島第一原発災害に対する医療体制1F:福島第一原発,2F:福島第二原発,J-Villege:サッカーナショナルトレーニングセンター,OFC:緊急事態応急対策拠点施設・原子力災害現場指揮所(オフサイトセンター)*2 Cisco webexという複数同時会話が可能なオンライン会議システム《http://www.webex.co.jp/》を利用している。磐城共立病院福島労災病院

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