FUKUSHIMAいのちの最前線
198/608

192東日本大震災:放射能汚染と避難命令への対応を編成した。「エコノミークラス症候群医療チーム」は深部静脈血栓症と引き続く肺血栓塞栓症などへの対応を行った。小型超音波装置を持参し,各避難所を巡回し早期発見・早期治療を行うとともに,予防のための啓蒙活動を行った。5月11日の活動終了までに2,200名の検査を実施し,約10%に血栓を発見した。このチームには4月25日よりヨルダン王国医療チーム(医師2名,看護師兼技師2名)が合流した。「小児・感染症チーム」は,6月2日の活動終了までにのべ31ヵ所の避難所を巡回し,乳幼児の健康管理のアドバイスと,避難所での感染症蔓延予防のための啓蒙活動を行った。このチームには5月9日よりタイ王国医療チーム(医師2名,看護師2名)が合流した。「心のケアチーム」は日本全国からの応援も得て,全県の避難所を中心に「心のケア」のための活動を行った。また,「看護学部チーム」は,この震災でその重要性が明らかになった保健師活動の支援を主体とした活動を行った。2.原発から20~30㎞圏の医療支援 福島県ではほかの地域と異なり原発事故が加わったため,DMATを中心とする医療支援に大きな空白地域が残っていた。それは,緊急時避難準備区域に指定された福島第一原発から半径20~30㎞圏内である。放射線被ばくの問題もあり,緊急医療支援は全く届かない状況にあった。このため,本学地域・家庭医療学講座,長崎大学,長崎県医師会,自衛隊衛生班,南相馬市立総合病院などにより3つの支援チームを編成,残存患者の把握とその支援にあった。広域搬送終了後にもかかわらず,この地域には自力避難不能の在宅患者が150名ほど残っていることが判明し,これら患者の医療支援活動を行った。この活動では,医療支援に加え介護支援が非常に重要であることが判明した。3.専門医療コンサルテーション 各避難所では,専門的医療や入院などを要する患者が日々発生する。しかし,避難所はこのような医療体制を考慮しては設置されてはおらず,専門医療提供には大きな問題が残っていた。このため本学では,県内唯一の大学病院という特性を生かし「高度医療コンサルテーションチーム」を編成した。このチームは,脳血管障害・心疾患・呼吸器疾患・糖尿病・腎疾患などの専門医からなり,24時間体制で各避難所や地域中核病院からの電話相談を受け付けた。各専門領域の医療相談に加え,入院が必要な患者に関しては,近隣の入院先病院の紹介と連絡,重症患者については本学附属病院での受け入れ,などを行った。 本学は,1999年9月の東海村JCO臨界事故発生を契機に,2001年3月,第二次緊急被ばく医療専門施設として「検査除染施設」を病院棟東側に,「無菌Ⅲ 福島原発事故対応の医療 (図2)図2 第二次緊急被ばく医療専門施設および周辺に設置された除染・待機施設

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です