FUKUSHIMAいのちの最前線
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172福島県立医科大学 神経解剖・発生学講座 八木沼 洋行総合科学系・生命科学社会医学系教職員による放射線モニタリング活動の記録(1)24時間環境放射線モニタリング 3月16日(水)午後、大学災害対策本部から、総合科学系・生命科学社会医学系教職員に対して、環境放射線量を24時間モニターし大学構成員に知らせる業務を担当するように依頼があった。これは、前日15日の夕刻から医大周囲も含めた福島市全域において環境放射線量の顕著な上昇(最大24μSv/h程度)が認められたことから、さらに放射線量が上昇した場合にいち早く対処できる態勢を作ること(いわゆるコードレッド)と、大学構成員にリアルタイムに環境放射線量を知らせることで無用な不安を払拭することを目的としたものであった。環境放射線量の計測は、3月13日午前10時から16日午後5時までは、放射線部の大葉技師が個人的なボランティアとして業務の合間に行っていたものであった。この計測を引き継ぐ形で総合科学系・生命科学社会医学系教職員による放射線モニタリングがスタートすることとなった。各所属の連絡要員の教員に集合してもらい、24時間の輪番体制を組み、16日の午後6時からの計測を担当することとなった。計測は初め放射線部の電離箱式線量計(左図)を用いて病院守衛室前の玄関の外で行われた。3月18日以降は、後述するようにweb配信の体制が出来たためこのシステムを使って行われた。測定結果は医療情報部に直ちに伝えられ、デスクネッツや電子カルテに掲載された。その後、原発の事態が落ち着くにつれ測定頻度は毎正時から一日6回(3月18日から)、3回(3月22日から)、2回(4月1日から),1回(5月12日から)と減り、これ以降はRI施設教職員が平日を担当し総合科学系・生命科学社会医学系教職員が休日を担当することとなった。さらに6月からは休日の測定が無くなり、計測はすべてRI実験施設職員に引き継がれた。測定値はデスクネッツに掲載されている。http://cello.cc.fmu.ac.jp/background/background.pdf(2)環境放射線量リアルタイムモニタリング値のインターネット公開 3月17日(木)、細胞科学研究部門の和田教授から、Webカメラで測定器の値を配信すれば24時間環境放射線モニタリングの負担が減らせるのではないかという提案と機器の提供の申し出があった。実証実験を行ったところ、使用可能であることが判明したので、3月18日のモニタリングから使用することとした。測定器は和田教授所有のガイガーカウンター方式サーベイメータ−であった。この計測器を学術情報センター事務室の中庭側の窓際に設置し、情報システム担当の佐藤主査と佐久間主任主査らが画像配信システムをセットアップした。当初、時折サーバーがダウンするなどのトラブルがあったが、改良の結果、3月24日には安定した配信が可能となった。そこで、この測定値の画像をインターネットで広く公開することを災害対策本部に提案し、了承が得ら 2011年3月11日の地震発生後、限られた水や食料の備蓄を節約し大学病院の機能を維持するため、総合科学系・生命科学社会医学系教職員は最小限の連絡要員を除いて自宅待機体制となっていたが、原発からの放射能の漏出が起こるなど、事態が深刻化するなか、放射線量モニタリングの任務にあたることになった。総合科学系・生命科学社会医学系教職員が担当したのは(1)24時間環境放射線モニタリング、(2)環境放射線量リアルタイムモニタリング値のインターネット公開、(3)病院来院者に対する放射能汚染サーベイランスと病棟内モニタリングであった。筆者は当時副医学部長として大学災害対策本部会議や全体会議に出席し、総合科学系・生命科学社会医学系教職員への連絡・分担の調整等を担当したので、以下にそれらの詳細について記録しておく。

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