FUKUSHIMAいのちの最前線
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第3章放射能との闘いFUKUSHIMA いのちの最前線171に影響はない」は、数回または1週間などの短期間、基準値を多少超えた食品を食べたとしても影響はありません、ということを意味しています。NHK〔ニュースウオッチ9〕(23.04.01 OA)「原発周辺現地の悲鳴現地に入る医師」中継飯舘村訪問時のインタビューより(抜粋)──きょう飯舘村に入って、多くの人と言葉を交わしているが、どのような印象を持ったか? 農家では、外で働く時間が長く、特に不安が大きい。高い放射性物質を検出した土への不安も重なる。健康への影響は大丈夫と考えるが、土については、さらに多くのデータが必要。──健康への不安を訴える人も多いが、専門家として、どう伝えているのか。 現時点で、健康に影響を与える年間100ミリシーベルトという被ばく線量にまったく達していない。不安を感じるのは理解できるが、正しく怖がって。──放射線は目に見えないだけに、住民の人達は不安を感じているようだが、どういったことを伝えていくべきか。 現時点で放射線被ばくの健康影響はほとんどない、ということを伝えている。政府などが正しい情報を出し、メディアが正しく伝え、市民が正しい行動をするという3つのどれもが欠けてはいけない。パニック状態を鎮めるために、正確に伝えることに注力している。──山下さんは、チェルノブイリ原発事故のあと、周辺に住む人たちへの診療を続けている。今回の事故が起きてから、チェルノブイリ事故は、しばしば比較として出されるが、違いはどういった点か。 チェルノブイリは、炉心がさらけ出されて、大量に放射性物質が放出された。今回は、圧力容器の中にあり、異なる。 一方で、放射線の人体に与える影響はチェルノブイリのような事故を教訓に国際機関や、各国の様々な研究機関がデータを蓄積してきた。実際の被ばくの例は少ないので、貴重なデータになる。──それでは、今回はまず、どういったことを見ていけばいいのか。 子供の甲状腺のがん。放射性ヨウ素は、子どもに必要な甲状腺ホルモンを作る材料として取り込まれ、成長期の子供に大きく影響する。 実際に、チェルノブイリでは事故当時15歳未満の中から事故後20年間で、およそ5000件発生した。 しかし、当時は全く摂取制限もなかったが、日本の場合、基準値を超えるものは出回らない点で大きく異なる。 実際、子供の放射線量の調査が福島県内で行なわれているが、非常に低い値が出ている。したがって、大きな心配はいらない。──「ただちに健康に影響がない」という言葉を、多く聞いてきたが、その根拠となるものはあるのか。 一つはデータ。チェルノブイリ事故後の放射性セシウムの放出された量。非常に広範囲に拡がった。しかし、放射性セシウム137は体内に入ると筋肉に入るが、筋肉のがんは一例も出てない。今回の福島第一原発の事故でも放射性セシウムが放出されたが、今回の被ばく線量では問題ないと考えられる。──山下さんは、福島県にリスク管理のアドバイスをする立場だが、どういった提言をしているのか。 まもなく学校が始まるが、校庭で子供たちが遊んでいいか。しっかりとグラウンドの土のデータを集める必要があると伝えている。──今後、わたしたちは、どのような点に注意していけばよいのか。 福島県では、地元で頑張ろうという人たちが多い。そうした人たちを支えていくために、いたずらに風評に左右されることなく、放射線への正しい判断をして、福島県を支援していかなければいけない。(2011.05発行)

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