FUKUSHIMAいのちの最前線
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第2章福島医大関係者行動記録〈手記とメッセージ〉FUKUSHIMA いのちの最前線149(vol.63 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=89) 今こそ、井を掘ること九きゅうじん軔、而しかも泉に及ばざれば、なお、井を棄すつと為すなり(孟子) この心が必要だと、自らに言い聞かせています。 本学は、学位記授与式を中止しました。学位記は、本人への手渡しか郵送となってしまいました。学位記授与式であったはずの日も、朝から会議、連絡、御礼の挨拶などで感慨に浸る暇もなく終わってしまいました。その夜は、眼の前に誰も居ないことを承知で、就寝前、「人生が配ってくれたカードに愚痴を言ってはいけない」と語りかけてしまいました。夢の中でも仕事をして、自分の言葉で目を覚ましている有り様です。この非常事態が、卒業生が巌いわに爪を立てるような研鑽の切っ掛けになることを、只、祈りました。 人生の節目となる厳粛な式の中止は、私に苦い記憶をも呼び起こさせてしまいました。それは、学位ボイコット運動により、学位記(博士)を連絡メモのように事務室の受付で渡されたこと(大学という組織ですら、当時はこういう有り様だったのです)、そして教室自治会による“除名”という言葉の響きに、無念の涙を流したことです。 「沈黙の春」の福島ですが、庭には沈ジンチョウ丁花ゲが咲き始めました。吾妻小富士には「種蒔き兎」の雪形がみえています。 心を鎮め、決断は迅はやくと思い定めての毎日が続きます。しかし、実態は身み閑しずかならんと欲すれど風熄やまず(立原正秋「光と風」) です。 辛コブシ夷が咲き始めました。連レンギョウ翹も目につきます。先日は、黄水仙の群生を日当たりの良い道端に見付けました。“白い花”や華のある黄色が、波立つ心を鎮めてくれないかと願っているこの頃です。 今週の花材は、執務室は柔らかい手触り感のある形と温かい陶器の肌合いを感じさせ、心落ち着かせてくれます。秘書室は、凛としたカラーを中心に清楚さを演出しています。今週の花 庭には、木モク蓮レン、辛コブシ夷、石シャクナ楠花ゲ、海カイ棠ドウ、沈ジンチョウ丁花ゲ、木ボ瓜ケが、紫、白、赤と様々な色合いで咲き競っています。構内には、桜の根本に植栽されている雪柳が城壁の白壁のような造形美をみせています。 この時季、田たんぼ圃に田起こしがされ、水が張られます。福島では、表面が罅ひび割れした田圃が畑のように広がっていて、索さく寞ばくとした風景です。一方、再開通した新幹線の窓からみると、関東平野では水を張った田圃が出てきています。田圃に水が張られると、植えられた苗の動きで、風が吹き渡っていることを知ります。我が国の代表的な人間の作り上げた美しい風景の一つです。(vol.29 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=46)(vol.79 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=105)みちのくの小ちひさき市まちを汽車が出づれば安達太良や吾妻の山は雪白く若き緑の麥むぎばた畑や雜木林や赤き躑つつじ躅やみな稚わかく色あたら鮮しく —旅なれば何か愁かなしきやがて名も知らぬ川あり川の邊に小こ家いへ三みつ四よつ堤つつみぢ道を嫁ぎの群むれの群て行く見ゆ新にひづま婦も包み持ちたり 父母も包み持ちたりvol.122 春 愁2011年4月22日■ラナンキュラス キンポウゲ科/球根植物/原産:西アジア・トルコ地方/《名前の由来》ラテン語で蛙を意味するranaに由来。自生地が蛙の沢山いる湿地であることから/フワフワした柔らかい花弁が幾重にもかさなる。大輪咲き品種は存在感があり1本でも見応えがある。■ナルコユリ スズラン科(ユリ科)/原産:日本/春にスズランのような白い小さな花が咲く。葉に斑が入り、涼しげな印象のグリーン。とても強健な性質でガーデニングにも最適。

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