FUKUSHIMAいのちの最前線
151/608

第2章福島医大関係者行動記録〈手記とメッセージ〉FUKUSHIMA いのちの最前線145側も日頃から主体的に健康づくりに参加していくことが肝心です。しかし、記憶だけに頼るのはあまりにも心もとないです。災害時には思わぬものが大活躍することがあります。逆に「これさえあれば大丈夫!」というものも存在しません。ですから、いざという時のバックアップになるツールは多ければ多い方が安心です。例えば、日頃から健康管理のための情報(体重、血圧、検診データや常用薬など)をオンラインで自己入力しておいたお陰で、手持ちの健康手帳やお薬手帳を失い、かかりつけ医療機関が機能しない状況に陥りながらも、遠方の避難先で自ら健康管理に必要な情報を引き出すことができたというケースがありました。単に情報を引き出せただけでなく、日頃から自分の健康に対して充分な理解と高い関心をもっていたため、適切なセルフケアにもつながったようです。* * * 「どんな時も地域住民と共に歩んでくれる家庭医を求めましょう!」これが、震災の教訓から、皆さんにお伝えしたい切なるメッセージです。 今までは「そんな医者は周りにいない」と諦めていたかもしれません。しかし、求めない物は決して提供されません。地域住民全体から家庭医を求める声が増えれば、家庭医育成と理想の地域医療の実現に向けた動きが急激に加速するでしょう。地域住民と共に生き、苦しい時も嬉しい時もいつも寄り添ってくれて、いざという時に助けてくれるあなたの家庭医を貪欲に求めて欲しいのです。また、家庭医が日頃から地域の保健師さんや看護師さん、ケアマネージャーさん、行政職員さんらとともに、地域住民に対し健康問題に関する適切な指導・管理をおこなっていれば、災害時でも日常でも地域住民が主体的に疾病予防やセルフケアをおこなうことができるようになります。今回の震災で学んだことを無駄にしないために、どんな状況下でも機能し続ける地域全体の健康づくり(地域医療ガバナンス)を、地域で利用できるすべての医療資源を総動員しつつ、地域住民一人ひとりが主体的に参加して創りあげていくのです。そして、地域医療ガバナンスの構築のために指導的役割を果たすことができる家庭医の育成を支援していただきたいのです。 これからも私たちの前には数多くの困難が立ちはだかるでしょう。しかし、困難だからといって先延ばししている余裕は、もはや今の日本にはありません。“待ったなし”でやるしかないのです。私には家庭医療に対する熱い思いを共有し、支え助け合うことができる多くの仲間がいます。そしていわきには家庭医を志す若い医師が日々研修に励んでいます。この思いが皆さんにも伝わり、一人ひとりの行動につながれば、理想の地域医療再生は必ず成し遂げられる! 私はそう信じています。家庭医が見た東日本大震災①〜⑩

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です