FUKUSHIMAいのちの最前線
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第2章福島医大関係者行動記録〈手記とメッセージ〉FUKUSHIMA いのちの最前線113①地震発生後の外来の様子 3月11日14時46分、外来受診患者のピークが過ぎ、患者数が少なくなってきた頃、強くて長い地震が発生しました。1階にある外来師長室から飛び出すと、廊下の全非常扉が閉鎖していました。非常扉の小ドアを開けて各外来に向かうと、医師と看護師が協力して患者さんを外に避難誘導し始めていました。処置中の患者さんには、医師と看護師がそばに付き添っていました。その後も、歩行できる患者さんや車椅子の患者さんを、全外来スタッフ(医療事務職員、臨床検査技師、放射線技師など多職種)が安全に配慮し、正面玄関に誘導しました。外は雪が舞い寒かったのですが、余震が頻発し危険を感じたため、毛布を患者さんに配布し、外で待機しました。施設係から「病院倒壊の危険性がない」との報告を受け、正面玄関フロア内に移動しました。余震が少し落ち着いた時点で、外来に来ていた患者さんには、電子カルテが停止したこともあり、会計保留で帰宅していただきました。また、外来受診中の入院患者を1か所に集め、病棟名と氏名をリストバンドで確認し、各病棟に安否の連絡をしました。歩行できない患者さんは、エレベーターが停止中だったため、医事課職員や実習中の学生等の応援を受け、担架やシーツを用いて病棟まで移送しました。 その後、震災による受傷患者受け入れ準備に取りかかりました。当院の外来は29診療科あり、看護単位は病棟と分離して独立していて、看護助手も含めて79人のスタッフがいます。電話が不通となり、外来看護師全員の安否確認ができない状況でしたが、自主的に参集したスタッフを加えて準備を進めました。トリアージで赤タッグと判定された患者さんを救命救急センター外来へ移動させ、1階外来のうち、スペースの広い整形外科と内科を、それぞれ緑と黄タッグ患者の受け入れ場所に設定しました。緑タッグ患者用スペースでは主に創傷処置ができるように準備し、黄タッグ患者用スペースには待合室にストレッチャーをそのまま入れられるスペースをつくりました。酸素、点滴、吸引や救急カートなどは各外来から持ち寄りました。予備として、隣の外来を物品不足対応のための物品保管場所としても使用できるように準備しました。 緑と黄タッグ患者の夜間受け入れを考え、外来看護師は3人ずつの3交代勤務を組みました。看護部の指示で21時まで全スタッフ待機となりましたが、外来では臨時職員と小さな子どもがいる職員は帰宅させ、残ったスタッフを0時30分までと、仮眠後0時30分からの勤務に分けました。外傷患者が多数来院することを想定して準備しましたが、予想に反してほとんど来院せず、通常の夜間受診数で、静かな夜でした。②翌日以降の対応 3月12日、0時・9時・21時に全所属長が参集し、全体ミーティングが開催されました。情報交換と連絡、今後の方向性や対策などが話し合われ、それを受けて看護部の対策を決定しました。外来は前日と同じ診療体制をとり、休日予約外来診察は整形外科外来(緑タッグ患者用スペース)で実施しました。地震の後すぐに休日に入ったので、外来の混乱はあまりありませんでした。 断水による水の使用制限のため、外来患者と面会者の制限を行いました。入口を正面玄関に限定し、出口を別の場所にして患者さんの流れを一方向にし、放射線量測定を開始しました。また、外来看護師は被ばく者の除染対応と、臨時に設けた職員の子ども預かり所も担当しました。各担当責任者がPHSをもち、連絡をとり合いました。 3月13日、翌日月曜日からの外来体制にあわせたスタッフの勤務体制の調整を行いました。日勤看護師を応援業務担当(看護助手を含む)として配置し、外来体制にあわせた準備、片づけ、緊急対応を担うことにしました。その他、被ばくスクリーニング担当2人、除染担当2人を配置しました。外来は、その日の状況によって体制の変化が求められるので、その変化に対応しながらスタッフの体制配置を行うことが看護師長の役割と考え、行動しました。 3月14日、来院患者や面会者に対し、病院敷地入口に看護師と事務職員が立ち、車を止め、外来受診患者や面会者の制限を行っていることを説明し、診察の必要性を判断する玄関トリアージを行いました。外来は、緊急性のある患者をトリアージ担当看護師が判断し、診察することとしました。緊急性のない予約患者には、おくすり手帳や前回の処方箋を院外薬局に持参すれば、災害対応で薬を受け取れることを説明しました。また、原発避難区域から来院された患者さんには、放射線技師が放射線量を測定しましたが、除染が必要な患者さんはいませんでした。電話では、インスリンとストーマ用品についての問い合わせが多く、それぞれ1人の看護師が対応しました。外来看護師長奮闘記―地震・原発事故から2週間の記録目黒 文子看護部副部長(元・外来看護師長)福島県立医科大学附属病院の活動記録

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