FUKUSHIMAいのちの最前線
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108現状です。今こそ多くの家庭医を次々に育成する必要に迫られています。 そして、家庭医育成はもはや福島だけの課題ではありません。家庭医を志す日本中の医学生・研修医が、みな当たり前のように家庭医の専門研修が行えて、すでに地域の診療所で医療を実践している医師も家庭医療実践のために必要な技術を学ぶことができる環境を、一刻も早く整備する必要があります。 最後に、福島の家庭医から国民の皆さんへのメッセージを2つ贈ります。(1)主体的にご自分やご家族の健康管理をしましょう! 大規模災害などで惨事が襲ってきたとき、最終的に自分や家族の命を守れるのはあなた自身です。今回の震災のように、健康手帳やお薬手帳が津波に流されてしまったり、医療者側で管理する診療情報が喪失、または電子カルテシステムのダウンにより一時的に利用できないような事態が発生すると、頼れるのは患者さんの記憶だけになります。どんな事態に陥っても容易に崩壊しない、より強固な地域医療を実現するためには、医療者側だけでなく、患者さんも日頃から主体的に健康づくりに参加していくことが肝心です。 しかし、記憶だけに頼るのはあまりにも心もとないですよね。災害時には思わぬものが大活躍することがある一方、「これさえあれば大丈夫!」というものも存在しません。ですから、いざという時のバックアップになるツールは多ければ多い方が安心です。例えば、日頃から健康管理のための情報 (体重、血圧、健診データや常用薬など)をオンラインで自分で入力していたおかげで、手持ちの健康手帳やお薬手帳を失い、かかりつけ医療機関が機能しない状況に陥りながらも、遠方の避難先で自ら健康管理に必要な情報を引き出すことができたというケースがありました。単に今回情報を引き出せただけでなく、日頃から自分の健康に対して十分な理解と高い関心をもっていたため、適切なセルフケアにもつながったようです。(2)どんなときも地域住民とともに歩んでくれる家庭医を求めましょう! これまでは「そんな医者は周りにいない」とあきらめていたかも知れません。しかし、求めないものは決して提供されません。国民全体から家庭医を求める声が増えれば、家庭医育成と理想の地域医療の実現に向けた動きが急激に加速するでしょう。地域住民とともに生き、苦しいときもうれしいときもいつも寄り添ってくれて、いざというときに助けてくれる「あなたの家庭医」を貪欲に求めて欲しいのです。 また、家庭医が日頃から地域の保健師や看護師、ケアマネジャー、行政職員らとともに、地域住民に対し健康問題に関する適切な指導・管理を行っていれば、災害時でも日常でも地域住民が主体的に疾病予防やセルフケアを行うことができるようになります。 今回の震災で学んだことを無駄にしないために、どんな状況下でも機能し続ける地域全体の健康づくり(地域医療ガバナンス)を、地域で利用できるすべての医療資源を総動員しつつ、国民一人ひとりが主体的に参加して創りあげていくのです。そして、地域医療ガバナンスの構築のために指導的役割を果たすことができる家庭医の育成を支援していただきたいのです。 これからも私たちの前には数多くの困難が立ちはだかるでしょう。しかし、困難だからといって先延ばししている余裕は、もはや今の日本にはありません。“待ったなし”でやるしかないのです。私には家庭医療に対する熱い思いを共有し、支え助け合うことができる多くの仲間がいます。そしてこの思いが皆さんにも伝わり、国民一人ひとりの行動につながれば、理想の地域医療再生は必ず成し遂げられる! 私はそう信じています。「地域包括ケア」の一環で主催している小学生の医療職場体験の様子地域ぐるみ、そして国民参加型の地域医療再生へ情報提供元: ヘルスケア編集・制作:㈱法研家庭医が綴る福島からのメッセージ

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