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平成26年度 学位記授与式(卒業式) 学長式辞  (平成27年3月24日)

第51回大学院学位記授与式 ・ 第62回学位記授与式における学長式辞
  

学位記を授与された、大学院修了生、学部卒業生203名の諸君、おめでとうございます。

卒業式は、「過去の提示」と、「未来の覚悟」を表明する場です。
君達は、本日から、各々の立場で、医療のプロとして生きていくことが求められます。 東日本大震災に伴う原発事故では、一人一人が「如何に生きるか」という死生観を問われました。
君達には未だ遠い先ですが、いつか人生のフィルムを巻き戻す、黄昏(たそがれ)の時が来ます。その時、自分の裡(うち)なる声に、必ず問われます。自分は逃げずに、ぶれずに、踏みとどまったのかを。

我々は、あの時から、側に居る人を頼り、遠くに居る人々を信じて、己(おのれ)の限りを尽くして立ち向かってきました。“疾風に勁草を知る”(しっぷうにけいそうをしる)、君達は、まさしく勁草です。君達とこの時期、その場に共に居たことを私は誇りに思っています。

この世では、今までもそうであったように、これからも、誰もが、自分の道を歩んでいかなければなりません。人間(ヒト)は、自らの選択を生かすことしかできないのです。

人生は出会いに尽きます。君達にとって、本学は掛け替えのない出会いの場となりました。近くに居ることが当たり前だった人の掛け替えのなさは、遠く離れてしまわないと気が付きません。

もう取り戻せない程遠ざかってしまって、初めて、誰かが近くに居ることの大切さを知ります。
だからこそ、今までの、そしてこれからの出会いを大切にして下さい。何故なら、“人生の扉は他人が開く”のですから。

人生の道々での出会いでは、職業、地位、年齢、肩書きで他人を判断しないことです。これらは所詮、一時的なものです。双方が、相手に敬意を払い、信頼を置くことが、仕事や友情の前提です。職業、所属、あるいは地位で評価される人間の哀しみに思い至る人間になって下さい。
人間というものは、人生が配ってくれたカードでやっていくもので、配られたカードが悪いと愚痴をこぼしたりするものではありません。そんなことをしたら、家族や友を悲しませるだけでなく、自らを卑(いや)しい人間にしてしまいます。

考えてみて下さい。人生こうしよう、ああしようと計画を立ててその通りになったことがあるでしょうか。ありません。
大切なことは、その場その場で己(おのれ)のベストを尽くすことです。他人の評価はどうでも良いのです。大事なことは、自分がどう評価するかです。何故なら、人間(ヒト)は自分に嘘はつけないからです。
今日から、君達は、「何になったか」ではなく、「何をしたか」に価値観を置いて下さい。

「世の中では、変わっていくものよりも、変わらない事の中にこそ大切なものが在る」というのが実感です。
そういう実感を持っている人間として餞(はなむけ)の言葉を贈ります。

先(ま)ず、「修業とは矛盾に耐えること」です。
世の中は矛盾と不条理に満ちています。しかも、医療人としての青春は、今、君達が思っている程長くはありません。医療人としての青春が過ぎて初めてそれに気付きます。だからこそ、修業では多少のことは我慢することを覚えないと、大成しません。世の中にはどう頑張っても、どうにもならないことがあるのです。その時、泣き言を言わず、それに黙って耐えることです。周囲はその姿をみて救いの手を差し伸べるのです。

もう一つは、“悔しさ”、“無念”そして“挫折”を、生きていくバネにすることです。
劣等感こそが成長の鍵です。逆境は、努力できる原動力になります。これから必ず味わう挫折を、「自らを鍛える良い機会」と捉(とら)えて下さい。努力できることも一つの才能なのです。悔しさ、無念、挫折を経験すると、他人の悔しさや無念さに思いが至ります。それが分かると、相手の立場になって考えることができます。そうすると、相手の苦労や努力もみえるようになります。その結果、自分の言動は自(おの)ずと懼(おそ)れを持ったものになる筈(はず)です。

最後に、「愚直なる継続」です。
時には、心に鎧(よろい)を着せて働くことも必要です。愚直なる継続は、誰もができる最大の武器であり、大成する王道です。運命なんていう言葉で人生を決めて欲しくありません。「意志あるところに道あり」です。

「風を待っている軒下の風鈴」のような受け身の態度での研鑽は、座席指定券のないこれからの人生、自分の運命を他人の手に委ねてしまうようなものです。
只、努力すればそれだけで人や運と出会えるほど、世の中は単純ではありません。しかし、「凡庸なる努力は凡庸な結果しか生まない」ことも、一面の真実です。
人生はやり直すことができません。
それだけに、後々後悔することのないように、一つの目標を定めたら、それに向かって、黙々と、しかも徹底的に、努力をし続けて下さい。その先に、今までみえていなかった何かが見えてくる筈(はず)です。

看護・医学に携わる人間として、どうなりたいのか、世の人々がどういう有り様(ありよう)を君達に求めているのかを、絶えず意識して下さい。その果てに、勁(つよ)さと優しさを持った看護や医療のプロの境地があります。

君達は今日、本学を巣立って行きます。君達が、本学を出て行くことはあっても、君達の心から本学が出て行くことはありません。自分の母校に誇りを持ち、自分がこれまでの歩みで得た出会いを大切にして、修業に励んで下さい。

最後に、未曾有の惨禍のなかで考えたこと、あるいは行為を、今後、生きていくうえでの座標軸にして、そこで自分が得た何かを次の世代に伝えていってくれることを切に希望します。

 

 

平成27年 3月 24日
福島県立医科大学 学長  菊地 臣一


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