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平成25年度 学位記授与式(卒業式) 学長式辞  (平成26年3月25日)

第50回大学院学位記授与式 ・ 第61回学位記授与式における学長式辞
  

学位記を授与された、大学院修了生、学部卒業生212名の諸君、おめでとうございます。

卒業式は「過去の提示」と、「未来の覚悟」を表明する場です。
この学位記により、君達は、本日から真の医療のプロとして生きていくことを求められます。

東日本大震災に伴う原発事故では、そこに向き合った一人一人に「如何に生きるか」という死生観が問われました。
人生の黄昏(たそがれ) に立った時、自分は逃げずに、ぶれずに、踏みとどまったのかを、必ず、自分の裡(うち)なる声に問われます。 我々は、あの時から、現実をありのままに受け入れ、そして側に居る人を頼り、遠くに居る人々を信じて、己(おのれ) の限りを尽くして立ち向かってきました。その時、真に“疾風に勁草を知る”(しっぷうにけいそうをしる) を感じました。
君達は、まさしく勁草です。君達とこの時期、共にその場に居たことを私は誇りに思います。

君達にとって、本学は掛け替えのない出会いの場となりました。
人生は出会いに尽きます。人生の意味は、側に居る人々との関わりの中で、喜びや共感を得て、明日を見出すことにあります。今までの、そしてこれからの出会いを大切にして下さい。何故なら、“人生の扉は他人が開く”のですから。人間は独りでは生きてゆけないし、誰かを仲間と思わずには生きてゆけないのです。

そして、人生の道々での出会いでは、他人を職業、地位、肩書きで判断しないことです。
これらは所詮、一時的なものです。双方が、相手に敬意を払い、信頼を置くことが、仕事や友情の前提です。職業、所属、あるいは地位で評価される人間の哀しみに思い至る人間になって下さい。

人は、過去という軸と他人との関わりというもう一つの軸の交叉したところで生きています。その積み重ねの先にあるものが未来です。
人間というものは、人生が配ってくれたカードでやっていくもので、配られたカードが悪いと愚痴をこぼしたりするものではありません。そんなことをしたら、今までの過去を自ら否定したことになります。そして、家族や友を悲しませるだけでなく、自らを卑(いや)しい人間にしてしまいます。

考えてみて下さい。人生こうしよう、ああしようと計画を立ててその通りになったことがあるでしょうか。
ありません。大切なことは、その場その場で己(おのれ)のベストを尽くすことです。他人の評価はどうでも良いのです。大事なことは、自分がどう評価するかです。
今日から、君達は、「何になったか」ではなく、「何をしたか」に価値観を置いて下さい。

君達より、少し先を歩いている人間として、君達に三つの言葉を贈ります。
一言でいうと、「世の中には変わるものも多いが、変わらないものはもっと多い」というのが実感です。

先(ま)ず、「修業とは矛盾に耐えること」と認識することです。
世の中は矛盾と不条理に満ちています。世の中に平等はありません。只、それを克服しようとすることで、「運」が君に微笑むかもしれません。生きていくなかで我慢することを覚えないと、最後まで一人前になりません。世の中にはどう頑張っても、どうにもならないことがあるのです。その時、泣き言を言わず、それに耐えて、どうするかを考えることです。
その結果として、その人の優しさが作られていきます。

もう一つは、“悔しさ”、“無念”そして“挫折”を、生きていくバネにすることです。
劣等感こそが成長の鍵です。逆境は、努力できる原動力になります。これから必ず味わう挫折を、「自らを鍛える良い機会」と捉(とら)えて下さい。努力できることも一つの才能なのです。悔しさ、無念、挫折を経験すると、他人の悔しさや無念さに思いが至ります。それが分かると、相手の立場になって考えることができます。そうすると、相手にあるに違いない、他人には窺(うかが)い知れない苦労や努力もみえるようになります。その結果、自分の言動は自(おの)ずと懼(おそ)れを持ったものになる筈(はず)です。
ここに、人生の知恵である「折り合い」が生まれます。

最後に、「愚直なる継続」です。
これを実行するには鉄のような意志が必要です。時には心に鎧(よろい)を着せて働くことも求められます。「風を待っている軒下の風鈴」のような受け身の態度での研鑽は、座席指定券のないこれからの人生、自分の運命を他人の手に委ねてしまうようなものです。
愚直なる継続は、誰もができる最大の武器であり、大成する王道です。 人生はやり直すことができません。それだけに、後々後悔することのないように、一つの目標を定めたら、それに向かって、黙々と努力をし続けて下さい。
その先に、今までみえていなかった何かが見えてくる筈(はず)です。

これからの人生、明確な目標を持っている限り、どんなに辛くても耐えられます。
看護・医学に携わる人間として、どうなりたいのか、世の人々がどういう有り様を君達に求めているのかを、絶えず意識して下さい。その果てに、勁(つよ)さと優しさを持った看護や医療のプロの境地があります。

君達は今日、本学を巣立って行きます。
君達が、本学を出て行くことはあっても、君達の心から本学が出て行くことはありません。自分の母校に、あるいは自分がこれまで歩んできた道に誇りを持って、いつか母校の為に少しでも貢献できる人間に成長していって下さい。

最後に、未曾有の惨禍のなかで考えたこと、あるいは行為を、今後、生きていくうえでの座標軸にして、自分で得た何かを次の世代に伝えていってくれることを切に希望します。

 

 

平成26年 3月 25日
福島県立医科大学 学長  菊地 臣一


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