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「学長からの手紙」番外編 〜 新聞・雑誌への寄稿文から 〜

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2011年 2月20日付 福島民報 「日曜論壇」( 6 )

「福島民報」は、県内最大の発行部数をほこる地方紙の日刊新聞です。「日曜論壇」は県内各界の第一線で活躍する著名人によるコラム欄で、半期ごとに執筆陣を更新しながら毎週日曜日の本紙2面(社会欄)に掲載されています。
菊地臣一本学理事長兼学長は、今年度上半期に引き続き、下半期も執筆陣9名の1人として選ばれ、1年間の連載を行いました
。今回が掲載最終回となります。

福島民報社  http://www.minpo.jp
   (
日曜論壇掲載ページ「論説・あぶくま抄」 )  http://www.minpo.jp/column.html

「旅立ち」の君たちへ

来月、弥生3月は「旅立ち」の季節である。
卒業式は「過去の提示と未来への覚悟」を表明する場であるといわれている。

中学校、高校、あるいは大学と、旅立ちする立場は違っても、卒業後は、各個人には、社会に出て仕事を覚え、それを自分のモノにするために研鑽を積む時期が待ち受けている。
この「修業」の場では、多少の矛盾や不条理には耐えていくことが求められる。
修業や人生とは、「さまざまな厄介ごとの中を、折り合いをつけて生き抜いていく場」という認識と覚悟が必要なのである。

ただ、人生は計画を立てても、その通りになることはない。
もともと、完璧な人生などはないのである。人は、自分や世間と折り合いをつけて生きているのである。
でも、大切なのは、自分のベストを尽くすことである。愚痴をこぼしたら親や友を裏切ることになる。

世間には、「今まで出会った友や組織は愛せなくても、これから出会う人間や組織は愛せる」という人間が、ときに存在する。そのような人間は、その功利性ゆえに虚しい人生を送ることになる。

新しい環境は、慣れるまで一時、辛い時期がある。
しかし、その時こそが出会いの機会なのである。そこには、将来の一生の友や人生を左右する恩師がいるはずだからである。

君たちに言えるのは「千日の勤学より一時の名匠」 「三年学ばんより三年師を選べ」である。
どんな分野でも道を究めるには、組織を選ぶのではなく、良い師匠を求めることである。
組織はときに他人(ひと)を裏切るが、良き師は弟子を裏切らない。

出会いは、一方が求めただけで得られるというものではなく、相手が求めに応じてくれて初めて成立する。
しかも、その出会いが自分の人生にとって掛け替えのない出会いであるかは、その時は分からない。
それだけに、すべての出会いを大切にする必要がある。

もう一つは「愚直なる継続」である。
「大成には集中力、努力、情熱の持続が大切である」とよくいわれている。しかし、私のような凡人には、集中力や情熱の持続など、到底、不可能である。ただし、一つのことを決めて、それを続けることはできる。その積み重ねを3年間続けると、もはや、誰も到達できない境地に達することができる。
「愚直なる継続」は、人生を歩んでいくうえで最大の武器である。それができるのも、また才能の一つである。

新しい仕事を始めると、新たな発見もある。
例えば、組織でのコンセンサス(合意)の重要性である。しかし、もっと大切なのはリーダーシップ(指導力)である。このリーダーシップを担保するのは、情報の共有化と無私の精神である。

また、組織の運営には「政治と屏風は、折れて曲がらなければ立たない」ことも一面の真実である。
今という激動期、「人生の扉は他人が拓く(ひらく)」ことを信じて、愚直に歩んでいってほしい。

(菊地臣一・福島医大学長)

 

 

( ※ Webページ向けに改行位置を改変し、転載しております)

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