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「学長からの手紙」番外編 〜 新聞・雑誌への寄稿文から 〜

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2009年12月9日 日本経済新聞 「交遊抄」

日本経済新聞 平日の朝刊、文化面(最終ページ)に連載中のコラム欄「交遊抄」。 各界の著名人が友人・知人との出会いや交際の様子を紹介し、著名人の素顔や本音、そして思わぬ人のつながりを垣間見ることができる、話題のコーナーです。

日本経済新聞  http://www.nikkei.co.jp/honshi/

カナダの名医

1977年、カナダに留学し、20世紀を代表すると称された整形外科医、イアン・マクナブ氏に出会ったことは人生で最大の財産だ。国際的な視野をもつことができ、腰痛の専門家としての現在がある。

当時、大学紛争のあおりを受け、卒後研修が国内ではほとんどできない状態。窮余の留学だったが、実は英語が全くできなかった。
「押し掛け弟子」の待遇は見学者。語学がダメでも熱意はある。
朝早く出勤し、彼が回診する患者のカルテを事前に調べた。発言を一言も聞き漏らすまいと録音した。必死さが伝わったのだろう。かわいがってくれるようになった。
間もなく研修医に引き上げられれ、約2年間、徹底して面倒を見てもらった。
初めての国際学会では英語での質疑応答の際、代わりに答えてくれた。論文執筆では途中で何度も励ましてくれ、英文の細かい添削をしてくれた。学会出席のための旅費を黙って出してくれたことも度々あった。
帰国後、世界各国の医師と知り合いになれたのも彼のおかげだ。

20年ほど前に亡くなったが、彼との思い出は色あせることがない。出会いを大切にし、求められれば寛容な心で対する。その教えを今、弟子たちにも伝えている。

 

 

 

 

( ※ Webページ向けに改行位置を改変し、転載しております)

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