菊地臣一 コラム「学長からの手紙 〜医師としてのマナー〜

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216. 「名医」 と 「迷医」 は紙一重

最近、立場上、医療トラブルを評価する機会が増えました。
その時に感ずることは、以前( 7182 ) にも書いたように、「医師は一言多く」 が大切なのだと改めて思います。一般的に 「一言多い」 ということは良い意味では使いません。しかし、医療の世界では一言多く話すことは大切なことです。

例えば、何かの治療法を行うときに、期待できる効果は話しますが、時々起こり得る合併症については忙しさの余り話すことがなく、たとえ説明しても記録もしていないことが少なくありません。
不幸にして、患者さんに合併症が発生した場合、「そんなことは聞いていない」 ということから、医師と患者さんとの間に信頼関係が確立していないと、往々にして問題が拗(こじ)れて、両者にとって不幸な事態になってしまいます。

治療前に合併症の可能性を話して記録に残していると、不幸にして合併症が発生しても、両者に信頼関係がある場合には 「やはり先生が心配していたとおりになってしまった」 と患者さんは納得し、医師をより信頼するようになります。
一方、両者に信頼関係が確立していない場合、合併症の可能性について話していないと 「こんな風になるのだったらこんな治療は受けなかった」 という言葉が患者さんから発せられ、相互に不信感が芽生えます。
特に、手術は患者さんにとって一生に一度あるかないかの大変なことです。
手術は我々にとっての one of them と考えずに、患者さんにとっての one and only と捉え、正確に手術の有効性、限界、そして合併症、更には未だ分かっていないことをも説明し、記録しておくことが大切です。
「名医」 と 「迷医」 は真に紙一重です。


(2011.10.06)

 

 

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