菊地臣一 コラム「学長からの手紙 〜医師としてのマナー〜

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193.プロは常に自分の仕事の優先順位を考えよう

最近、プロとして自分の為すべき順序が充分に整理されていないのではないか、という事例に何度か遭遇したので筆を執りました。医師に限らず、professionalな仕事の責任を任されている人間にとって、同時に幾つもの懸案事項が舞い込んでくるのは普通のことです。日々、自分の頭の中で優先順位を付けて仕事をこなしているのが実情だと思います。医師としてのプロである以上、自分が置かれている環境や立場によって、その優先順位は異なります。

例えば、先日の医局旅行で、出欠表になかなか記載をしないスタッフ達がいました。私はこの時、彼等に苦言を呈しました。医局旅行は、医局の行事として恒例のものです。不要ならやめると決めれば良いのです。やる以上は、その目的の達成にスタッフは努力すべきです。スタッフが努力せずに、誰に旅行の成否を賭けるのでしょう。この場合は、スタッフは、医局旅行の日程でのスタッフとしての立場、そして自分の都合を考えて決めて良いのです。我々は、そうして日々のスケジュールに対応している筈です。

瞬時に自分の行動を決めて、幹事に無用な負担を掛けずに、早急に用紙に記入することこそがスタッフとしてのマナーです。人数が揃えば行かないで済むと考えているのであれば、最早、スタッフとしての資格はありません。自立して、組織に頼らずに生きていくべきです。自分の都合の良いときは組織に何かを求め、自分に関係の無い、或いは都合の悪いことは知らん顔をする、というのは余りに功利主義です。我々は、日々、こういったことを一瞬の裡に、人生の選択をして生きているのです。スタッフであれば、学生の教育、医局員や教室の向上・発展に懸命に努力するのが義務です。それが自分を磨くことにもなるわけですから。

一方、つい先日、幹事や新人の教室員が忘年会の下見と称して会場に出かけるので、BSL学生との会食を欠席するという話を聞きました。彼等への私の問い掛けに、「忘年会の下見を兼ねての宴会・宿泊は一ヶ月以上前に決まっていた。その日にBSL学生との会食が組まれれば、BSL学生との会食を優先するのは当然だ」と彼等は答えていました。そうであるならば、私に問い掛けられる前に、自分の判断で予定を切り替えるべきです。我々は、整形外科の教室員となった時点で、お互いに誓った筈です。学生を大事にしようということを。学生に誠意を求めるなら、先ず自らが誠意を示すべきです。

我々はプロです。プロになれば幾つかのトラブルや問題が同時発生します。我々はその時、スケジュールの調整や問題解決に当たっては、何がより優先されるべきかを絶えず判断して生きているのです。プロとして何が最優先されるかを臨機応変に考えて、組織人として個人として、周りが見て美しく爽やかに感じるように行動すべきではないでしょうか。

 

 

 

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