菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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109.天変地異は自分の思い通りにはならない

また雪の季節が来ました。今日も雪の為に何人かの医局勤務の人達が遅刻をしてきました。前にも指導して、今は医局員ではいなくなりましたが、回りの都合で自分の勤務時間に遅れるというのはどんな事をしてでも避けるべきです。どうしても遅れる時には連絡をすべきです。少なくともその基本には、他人に迷惑を掛けないという職業人としての意識が必要です。

考えてみようではありませんか。雪は自分の都合で降ってくれたり、止んでくれたりするでしょうか。雪が降れば当然交通機関は乱れるでしょう。乱れたら遅刻するかも知れません。だとしたら、前日の天気予報を聞き、或いは朝起きて雪が降っていたら相当早めに家を出るべきです。そうすれば他人に迷惑を掛けなくて済みます。職業人というのは、何等かの形で社会と繋がりを持っていますから、その人の行動は即周囲に影響します。でなければ社会人或いは職業人と言えない訳です。

それが、雪が降ったから遅れる、交通事故があったから渋滞して遅れるというのは、理由になりません。そのような天変地異が自分の思い通りになったら、こんなに楽な事はありません。ですから常に自分のスケジュールには余裕を持って行動し、しかも万が一遅れるような時には連絡をして、その迷惑を最小限に留める事がプロとしての、仕事が出来る出来ない以前の最低限の義務だと思います。

また、こういう時に一つ面白い事に気が付きました。自分が遅刻をしても私という組織のトップに見付からないから良かったという事を口走る人がいます。私の目の前で言う訳ではありませんが、そういう声が時々ドア越しに聞こえます。遅刻してきたら、職業人として、例え他人にそれが分からないで済んでも、自分の心の問題として遅刻をしたという事実を考えるべきです。

自らを律することの出来ない人に、何故我々医療現場の人間は他人を指導することが出来るでしょうか。また、このエピソードはもう一つの示唆を与えています。分からないと思っているのは自分だけです。そういう事が続くと、他人にはその人の心象風景が極めて悪く映り、他の仕事をする時の評価にも反映されてしまいます。

「それは理不尽だ」と言っても、人の心というものはそういうものです。お互い心したいものです。

 

 

 

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