菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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72.手紙や贈物には名前を

お歳暮の季節になりました。私の所にも私の地位に対してお歳暮が贈られて来ます。その中に会社名だけで贈られて来る物が少なくありません。私は、手紙には種類を問わず礼状を書くことにしていますが、こういった場合礼状を書くことが出来ません。こちらから誰に礼状を書くべきか問い合わせすると、私に贈ったことさえ知らない人間が、機械的に本社の社長、あるいは東北支店の支店長の名前をいいます。中には会ったことのない人もいます。秘書の話ではひどい場合には、誰に礼状を貰うべきか答えられない会社もあるそうです。そういった人に礼状を書いてもこちらは在り来たりの文章しか出来ませんし、心も込もりません。受け取る方もそうでしょう。

では翻ってお歳暮の原点に返ってみましょう。お歳暮は普段お世話になっている人にたいして「一年間本当にお世話になりました。来年も宜しくお願いします。」という意味のものだと思います。しかし、前述したような状態では逆効果です。却って良い感情は持たれずマイナスです。もし私が贈る側の立場に立てば、そこの医局に出入りしている人間の名前で贈ります。あるいはその組織を管轄している支店、あるいは営業所のトップの名前で出します。そうすれば、贈られた方も有り難く感じますし、当然その感謝の気持ちは普段の付き合いの中に生かされてきます。やはり、贈り物や手紙は組織の名前ではなく、出す人の個人の名前を入れるべきです。それでこそ生きると思います。

また、この話題に関しては本筋から離れますが、常日頃私が考えていることを書いてみたいと思います。それは、お歳暮、お中元に自分の会社の物をわざわざデパートから発送させている会社があります。経費節減なのかも知れません。しかし、これは経費節減にはなっていなく、却ってマイナスだと思います。何故ならば贈られた相手は「何をケチっているのだ」と思うに違いないからです。折角手間暇を掛けて、デパートを介して、自分の会社の商品を送るのであれば、同じ値段で全く別な会社の物を送った方が相手にはその真意が伝わります。贈り物とは物を介しての心の交流なのですから、どうせ贈るならちょした気配りをした方が、その贈り物は生かされます。

 

 

 

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