菊地臣一 コラム「学長からの手紙  〜医師としてのマナー〜

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5.確認を励行せよ

医療に携わる者にとって確認の励行は、必須な行為です。命令を受けた場合に、前日或いは直前に再度確認する、そういう確認が円滑な医療業務や組織を運営する際には欠くべからざるものです。医療や組織の円滑な運営の為には、どうしても大多数の人間が一つの事に係わらざるを得ません。それだからこそ確認が必要なのです。指示、応答、実行、報告その各ステップに確認が入らなければなりません。その事が最も強調されているのが軍隊です。軍隊は最も世界で機能的な組織です。なぜならば、一つのミスが命を落とす事になるからです。最も機能的、効率的な組織である軍隊に限りなく医局の組織、或いは病院の組織を近づける事が、無駄の無い機能的な組織になる事を意味します。

具体例を挙げてみます。私が何か医局のスタッフや秘書にものを頼んだ時にそれに対して返事をしてくれるのは良いのですが、その後その仕事がどう処理されたのか、処理出来たのか、処理されつつあるのか、処理出来ない何か困難な問題を抱えているのか、そのへんの報告が無い事が少なくありません。頼んだ私としては、それがどうなっているのか気になるので、時には非常に苛々します。理想的に言えば、「先生にこういう事を頼まれました。その結果こういう事になりました」と報告してくれれば一つ一つ問題が手際良く片付けられていくわけです。

もう一つ具体例を話しましょう。手術や処置をしている時に術者は術野から決して目を離しません。その為、指示とそれに対する返答、すなわち相手の口頭による返答ないし確認だけが頼りです。そういう時に助手や器械出しの看護婦さんが、返事をしてくれない限り、聞こえていないのか、聞こえていても返事をしないのか、或いはまた判っているけれどもまだ出来ていないのか、術者の私にとっては判らないわけです。ですから、何か指示を受けたら、「はい」或いは「これこれこういう事ですね」という確認、或いはその事後報告いわゆる他の場所でも書きましたが、復命が必要です。

また、最近は大学間でFAXのやり取りが頻繁に行われる様になりました。しかし、このFAXが曲者で、時々着いていない事があります。或いは逆にこちらが受け取ったという事を知らない為に向こうに無用の心配を掛けてしまう事も希ではありません。こういう時にちょっと手間ですが、「FAXを送りました」或いは「FAXを受け取りました」という確認がなされればこの様な無用なトラブルは避けられるのです。

こういう事を習慣づけると自分自身も楽になると同時に、指示した人も、頼んだ人も仕事の処理のスピードが非常に上がり、結果 的に自分への評価を高めます。確認の大切さをもう一度考えてみるべきです。

 

 

 

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