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福島県立医科大学

2015.10.09

【復興】 ICRP(国際放射線防護協会)第12回ダイアログセミナー報告(9月12日、13日) 〔放射線医学県民健康管理センター 国際連携室〕

国際放射線防護協会(ICRP)は、2011年の11月から福島県内で住民の皆さんや国内外の関係者を招いた対話集会「ダイアログセミナー」を開催しています。
今回、一連の開催の区切りとなる第12回ダイアログセミナーが2015年9月12日(土)、13日(日)の2日間にわたり「これまでの歩み、そしてこれから」をテーマとして伊達市役所で開催されました。その概要は以下の通りです。

(写真拡大)http://fmu-global.jp/wp-content/uploads/%E5%86%99%E7%9C%9F.jpg


第一日目:
セッション1:地域とともに歩んできて
発表者は各自がそれぞれの分野で取り組んできた、あるいは現在も取り組んでいる、よりよいコミュニティを作るための働きかけについて報告しました。その後パネルディスカッションが行われました。

発表:
片寄久巳(ペスコ):元県職員としての東京電力(株)福島第一原発事故への対応と反省点
佐藤理(福島学院大学):人々の不安に寄り添って
富田愛(ビーンズふくしま):ふくしまの親子支援のこれまでとこれから
後藤素子(小高、新潟):避難から今まで
保高徹生(産総研):この4年間の地域との関わりと研究活動

パネルディスカッション:あれから4年、末続地区の歩み
6人のパネリストがいわき市末続地区での取り組みについて話しました。公式の放射線マップがなかったことからこれを作成し、それを数値としてだけでなくコミュニティの生活の中で生かしてきたこと、そしてこれを行政の事業として継続していること、農地除染への取り組み、また住民の生活を住民の方々に見せることをスタンスとして写真を撮り続けていることについての話がされました。また、セミナーと並行して東京在住のこのカメラマンの写真展が開催されました。

セッション2:農業者の歩んできた道
いわき市、福島市、二本松でそれぞれ農業に取り組んでいる発表者からこれまで歩んできた道とこれからの希望についての発表がなされました。

発表:
筥崎晋(いわき、ありがとうファーム):ありがとうファームの歩みとこれから
山田猛史(飯舘村):営農再開への希望
菅野瑞穂(二本松、きぼうのたねカンパニー):福島の大地にきぼうのたねをまく

セッション3:対話:ステップ1−築いてきた道のりについての対話
この日発表された方々を含む21名の住民、専門家、マスコミの方々がこれまでの道のりについて述べ、さらに全員の話を聞いた後、再度意見を述べる形式で行われました。
震災から4年半が経過し、力強い復興が進みつつある中、子供の健やかな成長に向けた更なる努力の必要性、家族が離れて暮らすことによる問題、またコミュニティの高齢化が進み次世代の必要性等が指摘されました。
その中で、
  ・今後も対話は重要である
  ・各個人の選択は尊重されなければならない
  ・人々が前向きになり、よりよい生活を考える
  ・たゆまず進めば最終的に成果が得られる
  ・県外にいる人々も決して忘れず支援し続けることができる
ことが認識されました。

第二日目:
セッション4:メディアと社会
メディア関係者、またさまざまな立場、形でさまざまな人々に福島の情報を伝える、受取る、媒介している各発表者からその試みについての発表がなされました。

発表:
大森真(テレビユー福島):これまでの報道を振り返って
早野龍五(東京大学):測って伝える
伴由祈子(東京、大学生):点を線に、線を面に
宮井優(東京、フリーランス):東京の報道番組ディレクターとして「福島」との距離
宮崎真(福島県立医科大学):リエゾンの視点からみる4年半
佐倉統(東京大学):グローカルな現象―東京のミニメディアで福島を取り上げる
影山美知子(元教諭):風土にいかされ 風土を生きる

パネルディスカッション:「あれから三年」
2012年7月に開催された第3回ダイアログセミナーの「食品についての対話」で行われた発表を再度取り上げました。当時の発表の中で福島への差別と感じられるまとめのスライドがあったことに関し、今回の本パネルディスカッションのファシリテータは、3年を経た現状を踏まえ、福島に対する差別を表に出して議論することも必要なのではないかとの認識の下、当時と同じパネリストの参加を得て、現在どのように考えているかについて対話がなされました。


セッション5:発表:”Rehabilitation and recovery program to engage people from local communities” Raisa Misiura(ベラルーシストリン地区小児科医)
サンクトペテルブルグ大学医学部卒業後、30年前にストーリン地区へ戻って、地元の人たちと一緒に暮らしながら、非常に重要な課題である放射線防護に対する意識を確立するため2005〜09年に2つの健康支援プロジェクトを実施しました。
最初のプロジェクトでは、事故による影響を受けやすく、提供する情報を受容しやすい妊婦を対象としました。また、支援活動が継続的に行えることも考慮しました。さらに、妊婦のクラブを作り、会議の中で実際的な放射線の話、妊娠の話、健康な子育てにはどうするかなどの、共通の関心事を話し、楽しく会話することでストレスがたまらないようにしました。この他、妊婦がさまざまな食品の放射線を調理前後に測り、調理をすることで食品中の放射性物質量を減らせることを実感できました。
ふたつ目のプロジェクトは家庭を対象としてホールボディカウンター(WBC)検査を行いました。子供に対してはこのプロジェクト前から同検査を行っていましたが、今回は各家庭ごとの放射線の被曝状況を把握出来るようになりました。そして家族にひとりでもWBCの年間基準を超えるメンバーがいた場合介入することにし、被曝状況の把握と改善に取り組みました。
これらの実施にあたり
  ・住民の信頼を勝ち取るため、信頼できるデータだけ開示する。
  ・汚染のひどかった地区での保護者会では看護師が説明。その際、コミュニケーションが一方的にならないよう、看護師は村民の一員であり、専門家でもあるという立ち位置で説明した。
  ・指導方法としては子供同士を比べないことを徹底した。両親とはオープンに話すようにして、助言に耳を傾けてくれるように努力した。継続的に関わることが大切である。
  ・必要な情報とスキルは提供できる。しかし最終的意思決定は家族にある 。
  ・放射性物質はコントロールできるという感覚を持ってもらうのが重要で、このような活動を通してこども達を安心して育てることができることを理解してもらった。
  ・必要とされる知識があることで、ここで暮らせる。科学的エビデンスで放射性物質がどのようなものかを住民に理解してもらう。
  ・健康状態について正確な情報を本人に伝えていく。診断、あるいは投薬をするだけで終わらせず、住民にのしかかるストレスを緩和することが大切である。
  ・30年という時間の経過もあるが、「放射線が人生を狂わせた」と言う人々は、今はいなくなっている。
  ・内部被曝が0.1mSv/年(40Bq/kg)以下になったら、防護措置は不要である。
  ・事実、エビデンス、実測に基づいて話をするのが重要である
  ・最後のWBC検査はオルマニで行われ、166人中8人が40Bq/kgを超えていた。原因は、家庭での放射性物質を含む食品摂取である。
などの、示唆に富む方針、実績、成果について話がなされました。

セッション6:「ステップ2―未来への歩み」
26名のパネリストがこのテーマに沿い前日同様にまず各自の意見を述べ、2回目は他の方々の意見を踏まえて意見を述べる形式で行われました。
この対話を通じて、未来への主要な課題また考慮点として、
  ・放射能は問題の一面でしかない
  ・重要なことは状況を理解し、人々のストレスに対処する
  ・こどもの安全性、健康、健やかな生活を確保する
  ・それぞれの状況にある個人を支援する
  ・福島について話をし、ほかの人々、また次世代と対話を続けていく
  ・エネルギー政策
  ・ベラルーシ、ノルウェーの経験が明るい未来への希望を与えてくれる
ことが認識されました。

このダイアログセミナーは今回の12回を持って一応終了となります。最後にこのセミナーで司会を務めてきたICRPのジャック・ロシャール氏からこのセミナー開催に際し支援をいただいた各組織、また関係者への謝辞が述べられました。また会場からは12回を通してイニシアティブの労を取られたジャック・ロシャール氏に感謝の拍手が送られました。
(英語サイト)
http://fmu-global.jp/ja/2015/10/09/the-12th-dialog-seminar/


ICRP通信サイト(日本語):http://icrp-tsushin.jp/dialogue.html
ICRPホームページ(英語):http://www.icrp.org/





■ 放射線医学県民健康管理センター 国際連携室
  http://fmu-global.jp/ (英語サイト)

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