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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2016.05.20

vol.365  − 好 (このむ) −

5月の風が大地を吹き抜けています。若葉の香りを乗せた風が渡っている川岸、燕(ツバメ)が風に挑(いど)むように飛んでいます。鶯(ウグイス)の声も聞こえてきます。

川の1ヵ所に、彼岸(ひがん)と此岸(しがん)、上流と下流、同時に傾斜があります。
形成された斜めの瀬に、焼き物や着物にみられる、我が国の伝統的な文様である青海波(せいがいは)が、光に縁取(ふちど)られた黒い影となって水面に広がっています。
元々は遙か西方から伝来した意匠です。暫(しば)し、見惚れ(みとれ)てしまいます。

用水路の水辺には、黄菖蒲(キショウブ)の黄色、菖蒲(アヤメ)の紫、水芭蕉の白が一際(ひときわ)、目を惹(ひ)きます。
道端には、野薊(ノアザミ)の赤紫、シロツメクサの白、レンゲソウの紅紫、ムラサキツユクサの青紫、庭先には山吹の黄色、小手毬(コデマリ)の白が、可憐な花を姿でみせています。
庭には鈴蘭(スズラン)の白、花の盛りの今です。

山野での緑の色取りの中、果樹畑や水の張られた田圃(たんぼ)では、御夫婦で農作業に勤(いそ)しんでいる姿がみられます。ここだけは、自然と人間の時の流れが一体となっています。
こんな風景の中、若葉の揺れに風を視(み)、肌に陽射しを感じ、川の瀬音や用水路のせせらぎをバックグランドミュージックにして歩いていると、心の漣(さざなみ)が凪(な)いできます。

再建された学生寮の開寮式が行われました。(http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/topics_disp.php?seq=968
戦後間もなくから使われていた学生寮、東日本大震災により損壊し、この5年間は、住み続けることが出来なくなっていました。

式典で、玄関に掲げられる創建時からの看板が披露されました。
一枚板です。木目は浮き上がり、角は丸みを帯び、字も殆(ほと)んど読み取れません。
改めて、我が国における木の文化に思いを馳せていました。この古ぼけた看板に積み重ねられた“時の移ろい”、恐らく、そこに日本人の自然観や美意識が強く働いているのです。

日本人は、木それ自体と同じ位、木の香り、木目にも気を配っています。何かモノを作る時、先(ま)ず時間を掛けるのが、材料にする木材の選択です。
しかも、時の移ろいや雨風に晒(さら)された風合い、寂び(さび)も愛おしく感じます。

日本人が木それ自体を好むことは、古来から白木を好んできたことで、それと知ります。
例えば、桐の下駄、箪笥、檜(ヒノキ)の建材、寿司屋、小料理屋、酒場のカウンター、風呂、杉の八寸(はっすん)や曲げわっぱ、間伐材の割り箸、松の椀などです。

白木の魅力は、簡素で清潔なだけでなく、使い込むにつれてさらにきれいになっていくという“時の磨き”も愛される理由の一つです。
実用的なこともあるに違いありません。室内の温度や湿度を木の吸収によって調節しています。
木から見て取れる日本人の自然への眼差し、木の使い方にみる“和の知恵”、失いたくないものです。

古来、我が国には、故人の誕生を祝うという風習は無く、没後を記念することが多い様(よう)です。
没後40年、眦臾扈熟此覆燭しま・やじゅうろう)に少し関心が高まったせいで、決定版といえる企画展が開催されています。
生前は無名で、孤高の画家と呼ばれています。近年、注目されるようになりました。

彼に就(つ)いては以前にも記しました。
         (vol.16 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=32
         (vol.231 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=268
         (vol.251 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=288
福岡の美術館で月の絵に接して以来、気になっている画家です。
今回の展示、月、太陽の多数の作品が並んでおり、比べることが出来ます。細密な描写を越えて、迫ってくる何かが有ります。

今回、最も心惹かれたのが絶筆となった「睡蓮」です。
絵全体に透明感があり、しかも明るく、彼の到達した心境が無言の裡(うち)に示されているようです。自然を対象とした風景画、透き通った大気が印象的です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



※編集註:海外出張のため、今回は「今週の花」活け込み前に原稿を執筆しております。お花についてのコメントがありませんことをご了承ください。

今週の花


【理事長室】
■OHユリ〔シグナム〕   ユリ科/球根植物
/優雅な花姿と芳香が特徴のオリエンタルハ
イブリッド種。「シグナム」は純白で上向きに開
花する。「カサブランカ」よりもひとまわり大きい
巨大輪咲。
■ドウダンツツジ   ツツジ科/落葉低木/
新緑・花期・紅葉と1年を通して楽しめる樹木。
4〜5月頃にスズランに似た小さな白い花が咲
く。 赤色の花が咲く「ベニバナドウダン」、 白地
に赤い縞模様の花の「更紗ドウダン」もある。
■グラジオラス〔ソフィー〕   アヤメ科/球根
植物/《名前の由来》葉の形に由来し、ラテン
語で「剣」を意味する“gladius”から/1000
以上の園芸品種があり、 花色がとても豊富。
1m程の草丈で漏斗状の花が花茎いっぱいに
次々と開花する。「ソフィー」は白色。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3651.jpg

【秘書室】
■ブバルディア   アカネ科/常緑低木/《名前の由来》ルイ13世
のフランス王室庭園長のブバールの名から/4枚の花弁で十字型に
咲く筒状花。枝先に多数の花を房状に咲かせる。
■ピンポン菊〔ロリポップ〕   キク科/多年草/真ん丸に咲く可愛
い菊。日持ちの良い菊の中でも特に長く楽しめる。「ロリポップ」は淡
いピンク色。
■ポリシャス   ウコギ科/常緑低高木/アジア、アフリカ、オースト
ラリアなどの熱帯に約100種が自生。品種により葉形や葉色が異な
る。刈込に強く、熱帯地域では垣根にも利用される。
■キイチゴ   バラ科/半落葉低木/ラズベリーやブラックベリーな
どの総称で木になるイチゴ。 春にイチゴに似た小さな花が咲く。ヤツ
デのように切れ込みの深い葉をもつ。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3652.jpg

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