HOME > 理事長室からの花だより

理事長室からの花だより

新着 30 件

一覧はこちらから

理事長室からの花だより

2016.03.18

vol.357  − 援 (たすける) −

春の水、漫(そぞ)ろ歩き、用水路や川の瀬の水量や音が勢いを増し、生命(いのち)の躍動感を感じます。
大気も堅(かた)さを緩(ゆる)くしています。

“雛祭り(ひなまつり)”、町おこしの一環として、最近、広く行なわれています。自然の惨禍(さんか)を経験したからこそ、廃(すた)れてしまっていた地域の伝統行事や芸能が復活しています。

子供の頃、雛人形は周りにはありませんでした。戦後の貧しさのせいでしょうか。
         (vol.76 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=102
         (vol.317 http://www.fmu.ac.jp/univ/cgi/hana_disp.php?seq=356
雛祭りが甦(よみがえ)りつつあるという時の流れは、形は変わっても、時の移ろいに身を委(ゆだ)ねるという点で良いことです。
昔日(せきじつ)には確かにあった、穏やかな日本人の旧(ふる)き心が帰ってきているのです。

病院を抱えている本学は、世の中の縮図です。
患者さんを襲う病魔に、医療従事者と行政のプロである事務方、そして多くの職種の人々が一緒になって、向き合っています。このような場に“日常”を取り入れることは、患者さんはもとより、そこで働く人々にも良い影響を与えます。

医療と事務の人々には文化の違いがあります。それは、刺激的で、お互いに学ぶことの多い毎日です。

海外での修業で、恩師から学んだことです。
「患者さんの痛みではなく、痛みを持った患者さんを観なさい」、
「唯一の頼みの綱(One and only)と、医師を頼ってくる患者さんの思い、患者さんのうちの1人(One of them)という医師の考え、この二つを限りなく近づけるように努力せよ」と。

事務の方々は、患者さんという一つの集団、職種別の組織、住民、県民、国民と、人間を大きな一つの固まり(面)でみています。これは、数値を基にした仕事です。

課題を前にした時、解決の仕方も対照的です。
医療の修練を受けた人間は、どうしたら治療できるか、と帰納法(きのうほう)で考えます。
“手伝ってくれる人間(ヒト)が居ない”、“必要な器具が無い”は、言い訳になりません。医療の現場には、完璧という状況はありません。“ないから出来ない”は禁忌です。
“拙速”(せっそく)の重視です。

行政のプロとして教育を受けた人間は、解決するには、何を準備しなければならないか、足りないモノは何か、と考えます。演繹法(えんえきほう)です。
公務員の場合には、これに公平性、正確性、妥当性、実現性が入ってきます。受け身になりがちです。
“完璧”の重視です。

この5年間、本学の職員は力を合わせて、逃げずに、ぶれずに、現場に踏み止まって、斗(たたか)ってきました。

大学のトップとして瞬時の決断を迫られた時、一人前の医師になる修業で鍛えられた思考法や行動の仕方が役に立ちました。診療の場では、患者さんの集団とか平均値は念頭にありません。個対個です。

今の医療の現場は、科学の時代です。そこには平均値を重くみるEBM(根拠に基づく医療)という考え方が中心にあります。しかし、医師が患者さんの事情を考えて対処する、職人技とも言えるアートを大事にするNBM(対話に基づく医療)の思想も同じ位に大切です。

この5年間、拙速の医療人と、完璧の事務方の連携の結果、今があります。己には「自らを鍛える良い機会」と捉えての5年間でした。
この考え方の違いは、どちらが正しい(良い)か、どちらが間違っている(悪い)かの問題ではありません。文化の違いです。異なった文化を持つ人間が、手を携(たずさ)えることの大切さを学んだ5年でもありました。

診療と同じように、福島に生きる人間、一人ひとりを頭に置き、組織全体が、県民のうちの1人に視点を置いて行動して、これからも続く、長く、厳しい斗いを乗り切ってゆきます。

今週の花材は、色使いは対照的ですが、“華”を感じます。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■バンダ   ラン科/樹木や岩肌に根を張り
つかせて育つ。 洋ランの中でも特異なブルー
系の美しい花色。10cm程の大きな丸弁で、
花弁に入る網目模様が特徴。
■アリウム   ネギ科/《名前の由来》 ラテン
語の“匂い”を意味する語から/約700種の野
生種があり、ニンニクやネギの仲間。葉のない
長い花茎の先端に球形の花序をもつ。
■ラナンキュラス   キンポウゲ科/球根植
物/《名前の由来》ラテン語の“蛙”に由来。
蛙の生息するような湿地を好んで咲くことから
/薄く柔らかい花弁が幾重にも重なり、バラの
ような花姿。
■リュウカデンドロン〔サファリサンセット〕
ヤマモガシ科/花弁のように見える部分は苞
葉で、その中に花序がある。花持ちが良く、ド
ライフラワーにも適す。「サファリサンセット」は
赤茶色の品種。
■ポリシャス   ウコギ科/常緑低高木/ア
ジア・アフリカ・オーストラリア等の熱帯に約10
0種が自生。品種により葉形や葉色が異なる。
刈込に強く熱帯地域では垣根にも利用される。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3571.jpg


【秘書室】
■モカラ〔ルビー〕   ラン科/バンダ・アラクニス・アスコケントル
ムの3種の蘭を交配した人工種。南国らしい赤や黄色などの鮮や
かな花色の品種が豊富。「ルビー」は落ち着いた赤色。
■アンスリュウム〔トリニダ〕   サトイモ科/常緑多年草/花弁の
ように見える部分は苞で、中心の棒状の部分が花序。主に苞を鑑
賞するため、非常に長く楽しめる。「トリニダ」は赤と緑の複色。
■ムギ   イネ科/一年草/コムギ・オオムギ・ライムギ・カラスム
ギの4種。切花として流通するのは主にオオムギ。ドライフラワーと
しても利用できる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3572.jpg

▲TOPへ