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理事長室からの花だより

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理事長室からの花だより

2016.01.22

vol.349  − 愛 (いとおしむ ) −

この冬初めての本格的な雪です。牡丹雪(ぼたんゆき)で、木々の枝が撓(しな)っており、今にも折れそうです。執務室のブラインドを雪見障子にして外をみています。

         銀河沙 漲る 三千里 (いさご みなぎる さんぜんり)
         梅嶺 花排く 一万株 (ばいれい はなひらく いちばんちう)
                                             白

         千山 鳥の飛ぶこと絶え (せんざん とりのとぶことたえ)
         万径 人の蹤滅ゆ (ばんけい ひとのあときゆ)
         孤舟 蓑笠の翁 (こしゅう さりゅうのおきな)
         独り釣る 寒江の雪 (ひとりつる かんこうのゆき)
                                       柳宗元

外に人影は無く、音の消えた白一色の世界です。毎句の最初の文字を並べると「千万孤独」となります。

新年を寿ぐ(ことほぐ)和菓子が店頭に出ています。
「和菓子」、“和のおいしさ”の象徴です。ケーキなどの洋菓子に対して生まれた言葉です。

幼かった頃、和菓子と言えば、端午(たんご)の節句での柏餅(かしわもち)や粽(ちまき)、土産(みやげ)や贈答品としての重い羊羹(ようかん)でした。田舎で育った己には、駄菓子屋(今は死語か)で売っている煎餅(せんべい)や饅頭(まんじゅう)が菓子でした。

長(ちょう)じて知った生菓子、食べるのがもったいない美しさです。四季折々の風景を写しており、季節の移ろいをも味わうことが出来ます。和菓子は、“味わう”他に、“四季を愛(め)でる”のも“おいしさ”です。

整った空調設備、ハウス栽培の発達で、肌に感じる大気や野菜など、自然の恵みに季節感を失って、久しく時が経ちました。
今という時代、季節の移ろいを色や形で表現しているのが和菓子です。季節感に思いを巡らせての菓子と器の取り合わせ、“和の美”の一つです。

全国には、昔から愛でられてきた“地元菓子”があります。
弘前、水戸、松本などの城下町では、歴史に磨かれた地元菓子に出会えます。

どこにでもあるのが、塩漬けの桜の葉で包んだ桜餅です。
西日本は道明寺(どうみょうじ・道明寺粉で作った餅で餡(あん)を包む)、東日本では長命寺(ちょうめいじ・薄く丸く焼いた小麦粉の皮で餡を巻く)の形が多いようです。

今も買い求める袋菓子が、鹿児島の芋ケンピと北海道の北見ハッカ飴です。懐かしさを食べているようなものです。

“和の美”を代表する琳派(りんぱ)、その系譜は、加山又造など、現代の作家まで受け継がれています。
本阿弥光悦が鷹峯(たかがみね)の地を拝領して400年、様々な企画展が開催されていました。

琳派の創始者である俵屋宗達の手に成る屏風が久し振りの公開、源氏物語を知らない己には、作品に込められた寓意(ぐうい)までは読み取れません。
それでも、大胆、おおらかな色彩の対比、デザイン化されたような形象、観(み)る者を魅了します。

彼の来歴は不明、その評価も最近まで高くなかったという事実を前にすると、一人の人間のなし得た事の評価や美の価値観など、案外、曖昧(あいまい)であることに気付かされます。
只、作品を残していなければ後世の評価はありません。作品が残っているということは、同時代は勿論、その後もその作品を評価する人間が確かに居て、そのうえで時代という洗礼を受けて今に繋がっているということです。

印象的だったのは、酒井抱一の「波図屏風」です。意表を突く銀地です。よく変色せず、良い状態で今日(こんにち)まで受け継がれていました。
“粋で瀟洒(しょうしゃ)”という印象の作者ですが、この作品は、雄々しく、葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」を連想させます。
同時代の人ですから、立場の違いはありますが、どちらかが一方に影響を与えているのかも知れません。

曜変天目(ようへんてんもく)の茶碗がロビーの自然光の下に展示されています。仲々お目にかかれない作品の佇(たたず)まいです。

今週の花材は、色取りが対照的です。


(福島県立医科大学理事長  菊地臣一)



今週の花


【理事長室】
■黒目柳(クロメヤナギ)   ヤナギ科/落葉低木/猫
柳(ネコヤナギ)の変種。 猫柳は猫の尻尾のような銀白
色のふわふわした絹毛をつける。黒目柳は暗紅色〜黒
色の花穂を付け、枝も赤みを帯びる。
■カラー〔ウェディングマーチ〕   サトイモ科/球根植物
/ 《名前の由来》メガホン状の苞がワイシャツの襟 (カ
ラー)に似ていることから/“オランダから渡来した芋”を
意味する「阿蘭陀海芋」(オランダカイウ)の別名をもつ。
「ウェディングマーチ」は白色の代表種。品種名の通り、
結婚式等で多く利用される人気種。
■アルストロメリア   ヒガンバナ科/球根植物/1本
の茎から5〜8本の花茎を伸ばし、それぞれに花を咲か
せる。一つひとつの花はユリを小さくしたような花形。一
番花が終わるころにはわき芽を伸ばし二番花、三番花と
楽しめる。ほとんどの品種で入る花弁の斑が特徴。
■カザリシダ   ウラボシ科/常緑シダ植物/日本で
は沖縄以南に自生し、根幹や岩上に着生。深い切れ込
みが入る葉は、堅く革質で1.5mにもなる。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3491.jpg

【秘書室】
■カンパニュラ   キキョウ科/多年草/ 《名前の由
来》ラテン語の“小さな鐘”を意味する語から/風鈴のよ
うな形の花を一枝に多数咲かせる。世界に約300種あ
り、日本にも4種自生する。
■ムギ   イネ科/一年草/コムギ・オオムギ・ライム
ギ・カラスムギの4種。切花として流通するのは主にオ
オムギ。ドライフラワーにも適す。
■アスチルベ  ユキノシタ科/多年草/ 《名前の由
来》ギリシャ語で“輝いていない”という意味。一つひと
つの花が小さく目立たないことから/とても小さな花穂
が無数に開花。非常に丈夫な植物でガーデニングにも
適す。
■てまり草   ナデシコ科/多年草/真ん丸でコケや
マリモを連想させる花。 フサフサした部分は、 雄しべ・
雌しべ・花弁がガク片のように変化したもの。茎や葉は
カーネーションやナデシコと同様。
※拡大写真
http://www.fmu.ac.jp/univ/hana/3492.jpg

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