挨拶

教授ごあいさつ

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公立大学法人福島県立医科大学基礎病理学講座 千葉英樹

 3年前の3・11後、ふくしまの状況は一変いたしました。第一原発周囲の避難指示区域では現在でも、「時計の針が止まったままの住民不在の街」を目の当たりにできます。多くの家々は慌ただしく避難した時のまま、今も放置せざるを得ない状況です。除染に従事する方々を除けば街を行き交う人は皆無で、信号機の音のみが鳴り響いています。

 公立大学法人  福島県立医科大学 基礎病理学講座 未だ13万人の県民が、住み慣れた故郷や生活基盤を失ったまま日々を暮しています。また、種々の風評被害を払拭すべく、ありとあらゆる試みが続けられています。我々日本人は、このような街や住民が国内に存在するという現実をより直視する必要があるでしょう。避難生活を送り続けている皆様に心からお見舞い申し上げますとともに、被災地の真の復興を願っております。
 こうした中、本学では県民の健康を見守っていく調査を継続するとともに、ふくしまの復興を担う人材を育成に取り組んでいるところです。また、復興に向けた医療の拠点となる「ふくしま国際医療科学センター」の整備が本格的に始まります。さらに、福島県立医科大学ビジョン2014を策定し、その実現への決意を表明したところです。このように本学職員は、原発事故前には想像もしなかった使命をそれぞれの立場で担っているところです。
 さて本講座には、8名の新メンバーが加わりました。現在の講座メンバーは計25名で、教職員8名、大学院生7名、MD-PhDコース学部生10名という陣容です。着任当初とはまさに隔世の感があり、随分と賑やかになってきました。 本学病理学部門は5年前に再編されました。当講座(教員枠5名)は研究と教育を主体とする一方で、病理病態診断学講座(教員枠8名)は学内病理診断業務と教育を担っています。両病理学講座は緊密に連携し、更に垣根を無くして交流を深めているとことです。両講座の共通かつ最大の目標は、「若手のリクルートと育成」です。将来ある学生たちがサイエンスや病理学の面白さと楽しさを実感し、研究者や病理医として、あるいは基礎の素養を持つ臨床医として巣立ってくれればと考えています。幸いにして、基礎病理学講座のMD-PhDコース修了生・在籍者を中心にして、既に6名の若者が病理医になることを決意しており、選択肢の一つとして病理を考えている学生もかなりおります。このように、5年-10年後の両講座や県内病理診断の体制につきましては、希望の灯が燈っているところです。
 当講座の現在の研究テーマは、①幹細胞の上皮分化誘導機構、②新規ダイレクト・リプログラミング法の創出、③間葉系幹細胞に特異的なマーカーの同定と機能解明、④腎糸球体疾患の新規診断マーカーと治療標的の探索、⑤難治がんに対する分子標的療法の開発、⑥がんの転移メカニズムの解明、⑦C型肝炎の新規治療法の開発、⑧血液脳関門と脳疾患、⑨神経幹細胞の増殖・分化の制御機構です。当講座の強みは、1)正常・病気の組織像をはじめとする幅広い基礎医学の知識を研究に展開できること、2)独自の系を持っていることです。これらの研究テーマや様々な病気の仕組みに興味のある方は、是非気軽に講座にお越し下さい。大学院生・大学院研究生・博士研究員など、若いパワーが益々ラボに満ち溢れることを期待しています。
最後になりましたが、皆様方には末永いご支援とご協力を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
平成26年6月19日


研究について

研究分野 :実験病理学、細胞生物学

研究テーマ:1)細胞の接着・極性とヒト疾患
      2)核内受容体の機能解析

主な論文・著書:
・Chiba H et al., BBA-Biomembranes, 1778, 588-600, 2008.
・Fujita H et al., Mol Biol Cell, 19, 1912-1921, 2008.
・Nishikiori N et al., Diabetes, 56, 1333-1340, 2007.
・Chiba H, et al., J Cell Biol, 175, 971-980, 2006.
・Nagasawa K, et al., J Cell Physiol, 208, 123-132, 2006.
・Satohisa S, et al., Exp Cell Res, 310, 66-78, 2005.
・Ishizaki T, et al., Exp Cell Res, 290, 275-288, 2003.
・Chiba H, et al., Exp Cell Res, 260, 334-339, 2000.
・Chiba H, et al., J Cell Biol, 139, 735-747, 1997.
・Chiba H, et al., Mol Cell Biol, 17, 3013-3020, 1997.

所属学会:
 日本病理学会評議員
 日本癌学会
 日本細胞生物学会
 日本分子生物学会
 米国細胞生物学会