初期研修プログラム

当教室では、医療人育成・支援センターと連携し、卒後臨床研修の一環として皮膚科研修を行っています。皮膚科的知識・診断技術・治療法の基礎を身につけ、日常診療で頻繁に遭遇する皮膚疾患に対応する力を養い、プライマリーケアの一助とすることを目的としています。

 研修方法

皮膚科研修を行うには以下のいずれかの方法があります。

  1. 福島県立医科大学附属病院 卒後臨床研修プログラム内で皮膚科を選択する。
  2. 当院と連携している研修病院のプログラム内で福島医大附属病院皮膚科を選択する。

上記 2.の方法により今まで、福島赤十字病院や公立藤田病院など近隣の研修病院だけでなく、太田西ノ内病院や総合南東北病院、公立岩瀬病院など遠方の研修病院からも研修医の先生を受け入れてきました。研修プログラムによっては選択できない場合もありますので、あらかじめ研修プログラムをご確認ください。

 研修時期・期間

皮膚科は研修プログラムの選択科に位置づけられており、卒後2年目に皮膚科を選択する先生が多いですが、卒後1年目の先生も歓迎いたします。科の特徴として夏に外来患者数が増える傾向にありますが、入院患者数は20名程度で概ね一定ですので、どの時期に選択しても研修に過不足はありません。研修期間は1ヶ月から選択可能ですが、2ヶ月をお薦めしています。もちろん3ヶ月以上の研修も選択可能です。

 研修内容と特徴

 病棟

研修医の先生は病棟グループの一員になり、指導医の指導のもと、担当医として入院患者の診療を行っていただきます。皮膚悪性腫瘍、水疱症、乾癬、重症薬疹、重症皮膚感染症、広範囲熱傷など様々な疾患を経験できるだけでなく、日々のグループカンファランスや総回診に参加することで、皮膚科的知識・診断過程・治療法・プレゼンテーション技術が学べます。毎週水曜日に入院手術があり、助手として手術に入っていただきますので、真皮・表皮縫合などの外科手術の基本手技を習得できます。全層植皮術の採皮が行えるようになることを最終目標にしています。術前・術後管理の基本も学べます。

 外来

週2回程度、新患外来に補佐として入り、予診・検査・処置・皮膚生検について学びます。担当した症例は翌週の外来カンファランスで提示していただきます。希望者は指導医の病棟往診や外勤先に同行することもでき、湿疹、白癬、疣贅、帯状疱疹、褥瘡など皮膚科common disease を経験できます。専門外来で担当医師から直接指導を受ける機会も設けています。

 その他

皮膚科当直に副直医として参加でき、皮膚科救急を経験できます。外来カンファランスがある水曜日以外は診療業務やカンファランスが夜遅くまで行われることは少なく、18時までに全業務が終了するように心がけています。緊急の呼び出しも少ないので、勉強やレポート作成、家族と過ごす時間、趣味など自分の時間を十分に確保することができます。

 指導医

役職氏名出身大学卒業年資格専門分野
教授山本 俊幸東京医科歯科大学1988年皮膚科専門医 医学博士膠原病 乾癬
掌蹠膿疱症
准教授大塚 幹夫福島県立医科大学1992年皮膚科専門医 医学博士
皮膚悪性腫瘍指導専門医
皮膚腫瘍
リンパ腫 熱傷
講師/医局長花見 由華福島県立医科大学2001年皮膚科専門医 医学博士
食物アレルギー
皮膚腫瘍
助手菊池 信之岩手医科大学2004年皮膚科専門医 歯科医師皮膚腫瘍
乾癬
助手平岩 朋子福島県立医科大学2009年皮膚科専門医血管炎
助教森 龍彦福島県立医科大学2010年皮膚科専門医 医学博士強皮症
助教猪狩 翔平福島県立医科大学2013年医学博士光線療法
助教伊藤 崇福島県立医科大学2013年医学博士好酸球性筋膜炎
病院助手本多 皓東京慈恵会医科大学2007年皮膚科専門医アトピー性皮膚炎

 経験できる項目

初期研修では到達目標が定められていますが、皮膚科研修で経験できる項目は以下の通りです。

A 経験すべき診察法・検査・手技

(1)医療面接(3項目 / 3項目)

  1. 医療面接におけるコミュニケーションの持つ意義を理解し、コミュニケーションスキルを身に付け、患者の解釈モデル、受診動機、受療行動を把握できる。
  2. 患者の病歴(主訴、現病歴、既往歴、家族歴、生活・職業歴、系統的レビュー)の聴取と記録ができる。
  3. 患者・家族への適切な指示、指導ができる。

(2)基本的な身体診察(1項目 / 9項目)

  1. 全身の観察(バイタルサインと精神状態の把握、皮膚や表在リンパ節の診察を含む)ができ、記載できる。

(3)基本的な臨床検査(15項目 / 20項目)

  1. 一般尿検査(尿沈渣顕微鏡検査を含む)
  2. 便検査(潜血、虫卵)
  3. 血算・白血球分画
  4. 動脈血ガス分析
  5. 血液生化学的検査・簡易検査(血糖、電解質、尿素窒素など)
  6. 血液免疫血清学的検査(免疫細胞検査、アレルギー検査を含む)
  7. 細菌学的検査・薬剤感受性検査・検体の採取(痰、尿、血液など)・簡単な細菌的検査(グラム染色など)
  8. 肺機能検査
  9. 細胞診・病理組織検査
  10. 超音波検査
  11. 単純X線検査
  12. X線CT検査
  13. MRI検査
  14. 核医学検査
  15. 神経生理学的検査

(4) 基本的手技(11項目 / 19項目)

  1. 圧迫止血法を実施できる。
  2. 包帯法を実施できる。
  3. 注射法(皮内、皮下、筋肉、点滴、静脈確保、中心静脈確保)を実施できる。
  4. 採血法(静脈血、動脈血)を実施できる。
  5. 導尿法を実施できる。
  6. ドレーン・チューブ類の管理ができる。
  7. 局所麻酔法を実施できる。
  8. 創部消毒とガーゼ交換を実施できる。
  9. 簡単な切開・排膿を実施できる。
  10. 皮膚縫合法を実施できる。
  11. 軽度の外傷・熱傷の処置を実施できる。

(5) 基本的治療法(4項目 / 4項目)

  1. 療養指導(安静度、体位、食事、入浴、排泄、環境整備を含む)ができる。
  2. 薬物の作用、副作用、相互作用について理解し、薬物治療(抗菌薬、副腎皮質ステロイド薬、解熱薬、麻薬、血液製剤を含む)ができる。
  3. 基本的な輸液ができる。
  4. 輸血(成分輸血を含む)による効果と副作用について理解し、輸血が実施できる。

(6) 医療記録法(4項目 / 5項目)

  1. 診療録(退院時サマリーを含む)を POS(Problem Oriented System)に従って記載し管理できる。
  2. 処方箋、指示箋を作成し、管理できる。
  3. 診断書、死亡診断書、死体検案書その他の証明書を作成し、管理できる。
  4. 紹介状と、紹介状への返信を作成でき、それを管理できる。

(7) 診療計画(4項目 / 4項目)

  1. 診療計画(診断、治療、患者・家族への説明を含む)を作成できる。
  2. 診療ガイドラインやクリティカルパスを理解し活用できる。
  3. 入退院の適応を判断できる(デイサージャリー症例を含む)。
  4. QOL(Quality of Life)を考慮にいれた総合的な管理計画(リハビリテーション、社会復帰、在宅医療、介護を含む)へ参画する。

B 経験すべき・検査・手技

(1)頻度の高い症状(10項目 / 35項目、下線は必修項目)

  1. 全身倦怠感
  2. 不眠
  3. 体重減少、体重増加
  4. 浮腫
  5. リンパ節腫脹
  6. 発疹
  7. 発熱
  8. 関節痛
  9. 歩行障害
  10. 四肢のしびれ

(2)緊急を要する症状・状態(4項目 / 17項目、下線は必修項目)

  1. ショック
  2. 急性感染症
  3. 外傷
  4. 熱傷

(3)経験が求められる疾患・病態(18項目 / 88項目)

  1. 血液・造血器・リンパ網内系疾患
    [2] 悪性リンパ腫
    [4] 出血傾向・紫斑病
  2. 皮膚系疾患
    [1] 湿疹・皮膚炎群(接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎)
    [2] 蕁麻疹
    [3] 薬疹
    [4] 皮膚感染症
  3. 循環器系疾患
    [7] 静脈・リンパ管疾患(深部静脈血栓症、下肢静脈瘤、リンパ浮腫)
  4. 感染症
    [1] ウイルス感染症(インフルエンザ、麻疹、風疹、水痘、ヘルペス、流行性耳下腺炎)
    [2] 細菌感染症(ブドウ球菌、MRSA、A群レンサ球菌、クラミジア)
    [3] 結核
    [4] 真菌感染症(カンジダ症)
    [5] 性感染症
  5. 免疫・アレルギー疾患
    [1] 全身性エリテマトーデスとその合併症
    [3] アレルギー性疾患
  6. 物理・化学的因子による疾患
    [2] アナフィラキシー
    [3] 環境要因による疾患(熱中症、寒冷による傷害)
    [4] 熱傷
  7. 加齢と老化
    [2] 老年症候群(誤嚥、転倒、失禁、褥瘡)