研究活動の概要

 “臨床から湧き出た疑問を研究テーマに”

山本 俊幸  

我々の教室では研究テーマを1つに絞らずに、各々の教室員が興味あるテーマを自由に選び、臨床と研究とをあまり分けずに、入りやすいところから始められるようにしています。以下、研究の方向性について紹介します。

強皮症
私のライフワークの一つである、強皮症モデルマウスを用いた、皮膚硬化メカニズムの解析と、新規治療薬の開発に向けての研究を、大学院生を中心に進めています。具体的には、線維化におけるエフェクター細胞、線維化と肥満細胞、新しいサイトカインの関与、オートファジーなどをテーマに皮膚線維化の分子機構を解析しています(Exp Rev Dermatol 7; 559-68, 2012)。強皮症に限らず、成人スティル病や皮膚筋炎の皮膚病変形成のメカニズムについても臨床研究を進めています。また、創傷治癒に関しても、創傷治癒遅延モデルを用いて検討しています。

乾癬・掌蹠膿疱症
とくに関節症性乾癬や膿疱性乾癬の病態解析に取り組んでいます(ISRN Dermatol 630620, 2013)。また、掌蹠膿疱症性骨関節炎に関しても、その位置づけやSAPHO症候群との相違についての考え方を発表しました(J Dermatol 40; 857-63, 2013)。掌蹠膿疱症に限らず、病巣感染巣が関与する皮膚疾患にも注目してきました(Int J Dermatol 53; e242-3, 2014; Acta Dermato-Venereol 52; 721-2, 2013)。当科の菊地助手は、歯科医師免許も有しており、歯性感染症が関与する疾患について検討しています。乾癬に限らず、Th17/IL23 axisが関与する疾患の皮膚症状のメカニズムにも興味を持っており、炎症性腸疾患や、関節リウマチの皮疹についても検討を行っています(Mod Rheumatol 23; 617-22, 2013)。

悪性腫瘍
多くの地方大学と同様、当施設に集まってくる悪性腫瘍患者は多く、SCC, MMを始め、外陰部Paget病はここ数年、年間10例以上集まり、血管肉腫も多いです。また、悪性リンパ腫も大塚准教授が専門で、かなりの症例数を集めて解析しています。

サルコイドーシス
これまで経験した60例以上の当科症例を元に、いくつかの示唆に富む症例報告を作成するとともに、P.acnes の病因論で知られる東京医科歯科大学 江石教授と共同研究をしています。

ベーチェット病
金子前教授のご研究を引き継ぎ、教室に保存してある豊富な血清を用いての、新しいマーカーの検索や、結節性紅斑の病理学的な検討を継続しています。

感染症
大塚准教授は、近年報告が相次いでいる、Buruli潰瘍の家族例を見つけ出し、さらにその感染源が地域のザリガニである可能性を報告しました(JAMA Dermatol 150; 54-7, 2014)。他にも稀な感染症を経験することが多く、クリプトコッカス症、ノカルジア感染症などを微生物学教室との共同研究で解析しています。

他にも、皮膚症状と内臓疾患との関連についても以前より症例を積み重ね、Leser-Trelat徴候についてこれまで経験した症例を通した考え方や、最近の知見をレビューしました(Expert Rev Dermatol 8; 541-6, 2013)。また、EGF受容体阻害剤による様々な皮膚障害に関するレビューをまとめています(The Open Allergy J 6; 22-9, 2013)。食物アレルギーやOAS等のアレルギー疾患に関しては、花見助教を中心に治療や研究を進めています。壊疽性膿皮症は多数の症例を経験しますし、最近では帯状疱疹後に様々な皮膚症状が二次的に誘発される、isotopic responseについても数例の興味深い症例報告をしました。まだまだ胸を張って紹介できる研究など少ないのが現状ですが、自分たちが今できることを精一杯、気負わず、淡々とやるだけです。

皮膚アレルギーフロンティア Vol.12 No.2 2014-7 46-47 メディカルレビュー社
国内研究施設紹介 LAB REPORT IN JAPAN より抜粋・一部改変。原文はこちら(PDF)