福島県立医科大学 解剖・組織学講座

教授あいさつ

私たちが暮らす社会と同様に、人の体を作る細胞社会でも多くの営みが行われています。新たなものを作るだけでなく、要らなくなったものを廃棄、分解あるいはリサイクル利用する流れ、そしてその流れを調整する仕組みが必要です。これを細胞内分解システムと呼びますが、その一つとしてリソソームという細胞内小器官を利用した分解系が知られています。この仕組みがおかしくなると、タンパク質や脂質などは関係のないところで機能したり、淀んで凝集物となったりして、病気を引き起こしてしまいます。私たちの研究室ではこのリソソーム分解系を中心に研究を進めています。特に不必要となった物質を収集する機構である「オートファジー」、そしてリソソーム酵素を運ぶ「メンブレントラフィック」機構に注目しています。これら現象は様々な生命活動の根幹を成すために、例えば神経変性疾患、がん、生活習慣病などの病気とも関連します。

当研究室では、遺伝子やタンパク質を扱う研究から細胞・組織・個体レベルの形態解析、および病態解析に至るまで幅広く研究を行っています。しかし、私個人的には常に「かたち」や「形態学」にこだわっています。理由は何といっても「分かりやすいから」です。大学院時代から現在まで様々な研究を行いましたが、その中でも強い感動と衝撃を受けたのは単純明快な「形の変化」でした。感動は人を動かし、良い仕事にもつながります。今後もこの感動を生みだし、次世代を担う学生さんや社会の人々に伝えたいと願っています。

一方、医学部教育では解剖学と組織学という医学の基礎となる教科を担っています。人体の構造を肉眼レベルと顕微鏡レベルで観察するわけです。外国語の読み書き、会話ができるようになるには単語から覚えなくてはなりません。同様に医学書を読み、専門家同士で議論するには解剖学・組織学用語を頭に入れなければなりません。しかし、忘れてならないのは医学の進歩によって同じ構造でも見方や重要性が変化することです。次々と最新知見が見つかり応用されているのが現代の医学です。そこまで伝えられることを理想として、自ら勉強しつつ学生さんと向き合っています。

2014年2月  解剖・組織学講座 教授 和栗 聡

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